【空白の28年に仕掛けられた伏線】小説「ルビンの壺が割れた」紹介

小説

こんにちは! パドルです

今日は最近読んだ小説「ルビンの壺が割れた」を紹介します

宿野かほるによる作品で、本の帯に

「大どんでん返し!」

と書かれていたので読むことにしました

この物語では、二人の人物がフェイスブック上でメッセージをやり取りする様子が描かれています

その他の描写は一切ありません

最初から最後まで、二人のメッセージを読んでいくことになります

やり取りが進むにつれて、この二人に何があったのか、なぜ現在の状況に至ったのかが段々と明らかになっていきます

こんな人におすすめ

「ルビンの壺が割れた」はこんな人におすすめです

  • 軽く読める作品が好き
  • リアリティのあるやり取りが好き
  • 驚かされたい

あらすじ

簡単にあらすじを紹介します

先ほども書いたとおり、この小説では二人の人物のメッセージのやり取りが延々と続いていきます

一人は水谷一馬

50代男性で、もう一人の登場人物である未帆子をフェイスブック上で見つけたことがきっかけで、未帆子にメッセージを送り始めます

未帆子は40代女性です

二人がやり取りするのは28年振りのことでした

最後に会ったのは、二人の結婚式の前日

そう、水谷と未帆子は結婚しようとしていたのです

しかし当日になって未帆子が式場に現れず、それから30年弱の年月が流れてしまいました

水谷と未帆子は、当時のことを思い出しながらメッセージを送り合います

二人が出会ったのは、大学時代でした

水谷が四年生(正確に言うと一年留年して二回目の四年生)、未帆子が一年生でした

当時水谷は演劇部の部長で、未帆子はその演劇部に新しく入ってきたのでした

水谷は自分で脚本や演出も務め、オリジナル作品を書いていました

その劇のタイトルが

「ルビンの壺が割れた」

水谷の演劇に懸ける想いは並々ならぬもので、多くの部員からも慕われていました

一方、未帆子も演劇に真剣に取り組んでおり、演技の才能の溢れていました

「ルビンの壺が割れた」のヒロインは別の生徒の予定だったのですが、演技が上手すぎて未帆子が主役に抜擢されます

水谷と未帆子は演劇を絶対に成功させたいという想いを共有しており、通常の稽古時間以外にも二人で稽古する時間が増えていきました

その二人が惹かれ合うのは自然の流れで、やがて二人は付き合い、結婚を約束します

しかし式の当日、未帆子はいなくなってしまいました

いったい未帆子に何があったのでしょうか?

また、約30年振りにメッセージのやり取りを再開した二人の関係はどうなるのか?

予想の斜め上を行く真実が待ち受けています

ネタバレあり感想

ここからはネタバレありで感想を書いていきます

「ルビンの壺が割れた」未読の方はご注意ください

なぜ28年も空いたのか?

物語が始まってまず私が疑問に思ったことは、

「なぜ二人は28年もの間やり取りをすることがなかったのか?」

ということでした

結婚式当日に未帆子がいなくなったという事情から考えると、未帆子から水谷に連絡しないのは理解できます

表面上は未帆子が水谷を裏切ったように見えるからです

しかし、水谷からしてみれば、すぐに連絡を取るか、はたまた一生連絡を取らずにいるかのどちらかであるような気がします

未帆子に未練があるなら時間を空けずに何としてでも連絡を取ろうとするでしょうし、気持ちを切り替えたのなら連絡を取る気にはならないはずです

二人のやり取りは水谷がフェイスブックのメッセージを送ったことから始まっているので、水谷に未練はありそうです

また、婚約破棄の直後から水谷が連絡し続け、未帆子がそれを無視し続けていたという描写もありません

それではなぜ28年間も空いてしまったかというと、

「水谷が28年間未帆子に連絡できない状態だったから」

です

具体的に言うと、水谷は殺人を犯して服役していました

刑期が終了して一般社会に出てきたタイミングで未帆子に連絡を取り始めたのです

この事実は物語最終盤で明かされますが、それを受けて私は、驚きと同時に納得もしました

服役中であれば当然未帆子に連絡などできませんよね

ところどころに挟まれる違和感

水谷は服役しましたが、それによって更生することはありませんでした

むしろ、未帆子を殺すためにメッセージを送っていたのではないかと思えます

水谷の目的を未帆子の殺害だと考えると、物語中の違和感を覚える描写も腑に落ちます

例えば、水谷が未帆子の個人情報を聞き出そうとしていたこと

水谷はことあるごとに未帆子の現在の苗字や住所を聞き出そうとしていました

読者としては水谷の目的は知りませんから、

「昔の婚約者の今の生活を知りたいんだろうなー」

くらいに思っていました

住所を聞くのは少し気持ち悪かったですが…

しかし、そこまで大したことではないと気にしていませんでした

また、未帆子が偽りの苗字を名乗っていたことも違和感がありました

今は関係なくても、昔婚約していたのですから、自分の名前くらい教えてあげてもいいのではと最初は思っていました

これも水谷が殺人を犯したことを考えると納得できます

最後に、水谷のアカウントが途中で変わったこと

このことについて水谷は、特に意味はない、と説明していましたが、実際はとんでもない事情がありました

水谷には昔優子という許嫁がいたのですが、彼女の裏切りを知って関係を解消します

水谷が警察に捕まったのは少女を殺したからで優子は全く関係ないのですが、水谷は自分の人生を滅茶苦茶になった原因は優子と未帆子にあると考えました

刑期が終了した後、水谷は二人の殺害を計画しました

未帆子は難を逃れましたが、優子は殺されてしまいます

水谷は優子にもメッセージを使って近づきました

殺害後、警察にばれないように優子とやり取りしていたアカウントを消去したのです

これが水谷のアカウントが途中で変わった理由です

このように、一つ一つの細かい描写にも意味があり、水谷が殺人犯という事実がすべてを説明してくれます

見事な伏線回収です

まとめ

今日は小説「ルビンの壺が割れた」を紹介しました

読んでいて違和感のある描写は基本全てが伏線になっています

ただ昔の婚約者とメッセージのやり取りをしているだけだと思っていたら、物語の最後にはとんでもない事実が待ち受けています

短い物語なので、すぐに読めてしまえると思います

機会があれば読んでみてください

今日も最後まで読んでいただいて、ありがとうございました!

コメント

タイトルとURLをコピーしました