【さりげなく細かな伏線回収】小説「死神の精度」紹介

小説

こんにちは!

今日は最近読んだ小説「死神の精度」を紹介します

伊坂幸太郎による作品で、以前映画化もされていたと思います

物語に登場する死神は、人間の事故死や突然死を決定するための調査をしています

数日後に死を迎える予定の人間を一定期間調査し、死神が「可」と判断すればその人物は予定通り死に、「見送り」と判断すればその人物は死にません

ただ、死神が決定するのは事故死や突然死のみで、自然死、病死、自殺は決定しません

この死神、キャラクターとしても魅力的です

徹底的に冷静で何事にも動じませんが、人間界の常識を知らないために抜けているように見えることもあります

その対比がとても面白いです

そして、ミュージックが大好き

「死神の精度」はいくつかの短編で構成されていて、それぞれの物語中にちょっとした謎や伏線回収が用意されています

こんな人におすすめ

「死神の精度」はこんな人におすすめです

  • 冷静沈着なキャラクターが好き
  • コミカルなやり取りが好き
  • ちょっとした謎解きが好き

あらすじ

物語の主人公は死神です

彼は事故死や突然死などで、数日後に死を迎える予定の人間を調査しています

調査するときは対象者に接触しやすい人間の姿になり、「千葉」という名前を名乗ります

調査の結果、彼が「可」と判断すればその人物は予定どおり死に、「見送り」と判断すれば予定されている状況で死ぬことはありません

あるとき彼は一人の女性を調査することになりました

彼女の名前は一恵

メーカーのクレーム対応係です

偶然を装って近づき、話を聴いてみると、彼女はとあるクレーマーに悩まされていました

最初は商品に関する純粋なクレームだったのですが、一恵を指名してきたり、電話口で歌ってみろと言ってきたりと、段々内容が過激になってきました

彼女の話をひととおり聴くと、彼はミュージックショップへと向かいます

彼に限らず、死神は人間界のミュージックが大好きです

調査以外の時間はミュージックショップの試聴コーナーに入り浸ることが多く、同僚の死神に出くわすこともしばしばです

彼のお気に入りの曲のいくつかはとあるプロデューサーが手掛けていて、その日聴いた曲もその人によるものでした

数日後一恵に再会すると、彼女から例のクレーマーに会いたいと言われたという話を聴きます

彼女は実際会ってみることにし、死神もその様子を少し離れた場所から見守ることにしました

近づいてきた男を見て一恵は落胆の表情を見せますが、二人で繁華街に歩いていきました

その男は無理やり一恵をカラオケに連れて行こうとしますが、一恵が死神に助けを求めて事なきを得ます

一恵がその場から逃げ去った後にその男のことをあらためて見てみると、彼は死神の知っている顔でした…

ネタバレあり感想

ここからはネタバレありで感想を書いていきます

未読の方はご注意ください

主人公の特殊性を活かした伏線

「死神の精度」では、主人公である死神が様々な人間の姿を借りて調査対象の人間と接触し、その人物が予定通り死んでも問題ないかを決定していきます

全体がいくつかの短編で構成されており、ある短編で登場した人物が別の短編で登場することがあります

私はこのような展開がとても好きです

それぞれの話で世界観のつながりを感じられて、なんだかワクワクします

個人的に、良い物語というのは読み終わったあとに登場人物たちがどうなっていくのか気になる終わり方をするものだと考えています

自分で登場人物たちのその後を想像するのも楽しいですが、もっとテンション上がるのはその人物が別の物語に登場して、その後の様子がわかることです

「死神の精度」の最終章はまさにそんな感じで、その前の章までに登場した何人かの登場人物のその後が描かれています

例えば、最初の章に登場した一恵

彼女は悪質なクレーマーに悩まされていましたが、実はクレーマーの目的は、彼女を歌手としてデビューさせることでした

電話口で歌えと命じたのも、会って早々カラオケに連れ込もうとしたのも、彼女の歌声を聴くことが目的でした

たまたまクレーム対応した彼女の声に惚れ込み、何とかして接触しようとしていたのです

個人的にはもっとスマートなやり方があったのでは思いましたが、最終章では一恵のその後が少し描かれます

最終章は最初の章から数十年後(おそらく50年くらい?)が舞台です

死神の時間感覚だと数十年は誤差の範囲らしく、数十年経っていることは最終章の最初には明らかにされません

読者としてはそんなに時間が経っていることも驚きなのですが、それに気づくためのヒントとして一恵のことが言及されます

あれから彼女は歌手としてデビューし、かなり成功したようです

実は最初の章で一恵は、このまま生きていてもしょうがないと悩んでいたのですが、そんな彼女が成功を収めたというのは読者としてもうれしいです

また、最終章の調査対象者も、実は以前の章に登場した人物でした

以前の章ではとあるブティックに勤める青年が調査対象者で、その青年の恋が描かれていたのですが、彼が恋した人物こそが最終章の調査対象者でした

彼女は美容師なのですが、彼の店で買ったジャケットを長年ずっと大切にしていて、最終章でそのジャケットが登場することで死神が以前彼女に会ったことがあると思い出します

読者としても

「この人、あのときの女性だったんだ!」

とうれしいサプライズをされたときのような気持ちになります

このようにさりげなく各章がつながっていて、以前の章の出来事や登場人物が別の章の伏線となっています

まとめ

今日は小説「死神の精度」を紹介しました

死神というイメージ的に冷酷そうに思える主人公ですが、彼と人間との交流はなぜかコミカルで、読んでいて微笑ましいです

各章がさりげなく関連していることもあるので、つながりを探しながら読んでみるとより楽しめると思います

機会があれば読んでみてください

今日も最後まで読んでいただいて、ありがとうございました!

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