こんにちは! パドルです
今日は辻村深月の小説「傲慢と善良」を紹介します
最近書店に行ったときに文庫本が平積みされていて、帯に
「人生で一番刺さった小説」
と書かれていたのが気になって読んでみることにしました
辻村深月の作品は「かがみの孤城」もとても面白かったので、今回はどんな話なのか期待しながら読みました
読んだ感想を一言でまとめると、
「自分もヒロインと同じような考え方を持っているかもしれない」
でした
人生で一番刺さった小説と感想を抱く人がいるのもうなずけます
物語の基本的な流れは、主人公の架(かける)が失踪してしまった婚約者の真実(まみ)を探しながら、真実の身に何が起こったのかを明らかにしていく、というストーリーです
みどころ
この物語のみどころをネタバレなしで紹介します
真実の失踪
物語の冒頭は、真実がストーカーに追われていて架に助けを求めて電話する、という場面から始まります
主人公の架は自営業で、人当たりがよく女性にもモテてきました
真実とは婚活をしているときに知り合います
真実と知り合ったタイミングと自営業に転向したタイミングが近かったこともあり、事業が軌道に乗るまではと真実との結婚をなかなか決断できずにいました
しかし、真実がストーカーに追われているという電話を受けたときに、同棲と真実との結婚を決意します
そこから数か月が経って結婚式の段取りも進めていたある日、真実は突然失踪してしまいます
架は真実からストーカーに関する詳細を聞いていなかったので、手がかりがありませんでした
警察に相談するも、事件性がないと判断されてしまいます
納得できない架は、真実が地元の群馬にいたころに婚活していた相手がストーカーなのではと考え、群馬で真実と関わりあった人たちに話を聞きに行きます
いったい真実は今どこにいるのでしょうか?
真実の失踪については、驚きの結末が用意されています
現代の婚活の難しさ
この小説のもう一つのテーマが、
「現代の婚活の難しさ」
です
今はSNSの発達により婚活の幅も広がっています
昔ながらの結婚相談所を利用する人もいれば、アプリを利用して出会う人もいます
しかし、ピンとくる人に出会えることはなかなかありません
私は今婚活をしているわけではありませんが、友達づくりに関して似たような感覚を抱いています
たくさんの人に会う機会はあるけど、特に仲良くなりたいと思える人に出会えることはそうそうないです
この物語では婚活に焦点を当て、なぜピンとくる人に出会えないかに関して一つの答えを明らかにしてくれます
婚活に限らず、人との出会いに悩んでいる方には参考になると思います
私もこの答えを示されたときに、
「自分もこれにあてはまっているかもしれない」
と思いました
ネタバレあり感想
ここからはネタバレありで感想を書いていきます
「傲慢と善良」を未読の方はご注意ください
タイトルの意味
この小説のタイトルである「傲慢と善良」ですが、現代の婚活がうまくいかない理由がこのふたつだそうです
「傲慢」というのは、自分の評価は高く設定しても、相手の評価は低く設定することです
誰かと出会ってもピンとこないのはこのためです
自分にはもっと相応しい相手がいるはずだ、と目の前の相手は自分と釣り合わないと考えてしまうのです
また、相手のことも何か一つでも嫌なことを見つけてしまうと、相手の価値を低くしてしまいます
このような「傲慢」が原因で、なかなか良い相手に巡り合えないのです
もう一つの「善良」は、常に周りの人のこと(特に自分の両親)を気にして自分の意見を持たないことです
周囲の人から見れば自分の意見を尊重してくれるため、その人のことは「善良」に思えますが、人生のパートナーを選ぶという観点からするとこの「善良」さは障害になります
自分で物事を選択するという経験を積んでこなかったために、結婚相手を選ぶこともできなくなってしまいます
この「傲慢と善良」を持ってしまっていることが原因で、婚活がうまくいかないのです
小説を読み進んでいて
「たしかにそうだ」
と思えました
私も
「自分にはもっと相応しい人がいるのでは」
と思ってしまうことはあります
また、自分の意見もあまりないので下手すると周囲の意見に流されがちです
自分の中の「傲慢や善良」を改善して、色んな人との関わりを広げていかなければと感じました
嘘つきのほうが得をする?
物語の中盤で、真実にストーカーはいないことが明らかになります
ではなぜストーカーがいると嘘をついたのかというと、架に結婚を決断させるためです
実際真実の思惑通り、真実からのSOS電話をきっかけに架は真実との結婚を決意します
架はストーカーが本当にいると疑っていませんでしたが、架の女友達はそれがすぐ嘘だと見破ります
なぜなら彼女たちにとって、恋愛において嘘をつくのが当たり前だったからです
嘘のスペシャリストの彼女たちからすれば、真実のついた嘘はお粗末なものでした
実際その女友達と真実との恋愛経験は比べ物になりません
この小説を読んでいると、
「恋愛においては嘘をついたほうが得なのでは」
と思えなくもありません
しかしそれは違うと私は信じています
自分にも相手にも正直なほうがモテるというのは現代科学で明らかにされているからです
恋愛を駆け引きと考えると嘘をついたほうが得だという思考になりますが、実際の恋愛はWin-Winの関係性を目指していく作業です
(これはあくまで科学的知見に基づいた一つの考え方ですが)
物語でも、ストーカーは真実のついた嘘であることを架は知ることになります
それでも架の中の真実との結婚の意思は揺るぎませんでした
ここからは私の想像なのですが、架は真実が嘘に慣れていないからこそ結婚しようと思ったのではないでしょうか
架の周囲の女友達は嘘をつくことをなんとも思っていません
そんな女友達に比べたら、真実がすぐにバレてしまうような嘘しかつけない正直者であることが魅力の一つになっていてもおかしくありません
恋愛に限らず人と接するときは正直であることを心掛けたいと思います
まとめ
今日は小説「傲慢と善良」を紹介しました
婚活をテーマにした作品ではありますが、人との出会いすべてに共通する、一つの真実を示してくれている作品だと思います
人との出会いに悩んでいる方には必ず刺さる小説です
もし機会があればご一読ください
今日も最後まで読んでいただいて、ありがとうございました!
コメント