【天才ピアニストたちの共演】小説「蜜蜂と遠雷」感想

小説

こんにちは! パドルです

今日は小説「蜜蜂と遠雷」の感想です

作者は恩田陸で、「蜜蜂と遠雷」は2017年の本屋大賞で1位を獲得しています

2019年には映画化もされています

私がこの小説を読んだきっかけは、以前読んだ辻村深月の「かがみの孤城」がとても面白かったので、せっかくなら歴代の本屋大賞1位作品を読んでみようと思い立ったからです

「蜜蜂と遠雷」は映画で観ていたので、ストーリーは知っていました

また、ビアノコンクールを題材にした作品なので、映画で観たほうが実際に物語で使われている音楽を楽しめてよいのではないか、と思っていました

しかし、小説を読んでその考え方は変わりました

小説のほうが圧倒的に面白く、音楽の表現が豊かです

文章なので直接音楽を聴くことはできませんが、その代わりにコンテスタントが奏でるメロディが見せる情景をとても細やかに表現しています

音は聞こえませんが、文章表現から連想されるイメージの中で音楽に浸ることができます

これが小説「蜜蜂と遠雷」の一番の魅力ではないでしょうか

あらすじ

舞台は日本の芳ケ江国際ピアノコンクールです

近年、ここで優勝したことをきっかけに他のコンクールでも良い成績を収めるピアニストが増えており、国際的に注目されているコンクールです

「蜜蜂と遠雷」は複数の人物の視点から物語が展開されますが、主役級の人物は4人います

一人目は亜夜

彼女はかつて天才少女と呼ばれたピアニストで、幼い頃に数々のコンクールで実績を残していました

しかしあるとき突然表舞台から姿を消してしまいます

今回のコンクールは久しぶりに人前でピアノを演奏するということで、注目されています

二人目はマサル

フランスの音楽院の学生で、彼も幼い頃からピアノを続けてきました

演奏の技術もさることながら人を惹きつける魅力にあふれており、19歳にしてすでにカリスマ性を備えたピアニストです

三人目は風間塵

彼は養蜂家の息子で、世界各地を移動しながら生活しています

ピアノも持っておらず、正式な音楽を受けた経歴もなかったため、今回のコンクールも最初は書類選考で落ちていました

書類選考で落ちても演奏を披露し、その結果が良ければコンクールに出場できるのですが、そのときに披露した演奏が衝撃的なものでした

また、彼はホフマンという偉大な音楽家の弟子であったことも判明し、一気に注目度が高まります

四人目は高島明石

彼は楽器店の店員です

音大を卒業していますが、そのときに大きな成績は残していませんでした

今回も年齢制限ギリギリのエントリーです

音大生と違って練習の時間もなかなか取れない中、それでも練習を重ねてコンクールに出場します

この四人がいかにコンクールを戦っていくのか、その過程で何を思い、音楽にどう向き合っていくのか、が描かれます

ネタバレあり感想

ここからはネタバレありで感想を書いていきます

「蜜蜂と遠雷」未読、未視聴の方はご注意ください

ちなみに、ネタバレされて盛り下がるのはコンクールの最終結果だけだと思いますが、その部分には触れないので全部読んでいただいても大丈夫です

天才たちの共演

「蜜蜂と遠雷」には三人の天才が登場します

亜夜、マサル、風間塵です

それぞれが天才なのですが、少しずつ特徴が違います

亜夜と風間塵は似通っていて、どちらもイメージ通りの天才です

普通の人とは見てる世界が違いますし、一般のコンテスタントよりも多彩な音楽を表現しています

どちらもピアノが上手く弾けることは前提で、その先の目的を意識しています

一度挫折してしまった亜夜は、

「この先自分はどうしていきたいのか、何のためにピアノを弾くのか」

という悩みを抱えています

風間塵は、ホフマンと約束した

「音楽を外の世界に連れ出す」

ということを目標に、自分なりの演奏を模索しています

亜夜はコンクールに出場したのもお世話になっている先生から勧められたからで、最初はさきほどの悩みに答えを出せずにいました

しかし風間塵の演奏を聴くことで、次第にピアノを弾くことに対する考え方が変わっていきます

一方マサルは、努力型の天才です

彼は二人とは違って幼い頃から今まで継続してピアノを弾き続けてきました

成長するにつれて彼自身の魅力も増していき、今ではスターとまで言われるようになりました

マサルの夢は作曲もするコンサートピアニストで、クラシック全盛期の時代のように演奏も作曲もできるようなピアニストになりたいと思っています

この三人の天才から語られる「音楽」というものへの向き合い方や演奏中の情景描写が、それぞれの個性を反映したものになっていてとても面白いです

また、一般的な感覚を持つ人から見てこの三人の演奏や人物の印象が語られることもあります

その視点も三人の天才性を引きだたせるものとなっていて面白いです

明石の活躍

私が個人的に好きなキャラクターは高島明石です

なぜかというと、彼の置かれている状況に一番共感できるからです

明石は他のコンテスタントに比べて年齢を重ねており、家庭を持つ一般の会社員です

毎日忙しいなか何とか時間を作って練習していました

私も日々の仕事があるなかでこのブログなど、自分にできて今後につながることはないかと探し、試しています

明石の状況を見ていると、自分と共通のものを感じて応援したくなります

物語後半で明石がコンクールで結果を残したときには、本当に良かったと思いましたし、自分も頑張ろうと励まされました

まとめ

今回は小説「蜜蜂と遠雷」を紹介しました

音が聞こえなくても巧みな描写で音楽を聴いたときと同じような感覚を味わえる、素晴らしい作品だと思います

また、魅力的な登場人物がそれぞれ違った背景を持っているため、きっと共感できるキャラクターがいるはずです

亜夜のような天才たちの考え方やものの見方を体験できるのも面白いポイントだと思います

個人的には映画より小説のほうが素晴らしいと感じていますので、映画しか観ていない方はぜひ小説を読んでみてください

そもそも作品に触れたことがない方もぜひ!

今日も最後まで読んでいただいて、ありがとうございました!

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