【一線を越えたいほどの憎しみに駆られたときに読むべき物語】小説「青の炎」紹介

小説

こんにちは! パドルです

今日は最近読んだ小説「青の炎」を紹介します

貴志裕介による作品で、約20年前に映画化もされています

いつも紹介しているのはミステリーなのですが、この作品は個人的にはサスペンスだと思います

特に推理要素はなく、殺人を計画し実行してしまった人間の心情描写が印象に残る物語でした

主人公は男子高校生で、家族を守るために殺人を犯します

彼の行動は法律的には罰せられるべきものでしたが、果たして悪なのかどうかは読者によって解釈がわかれると思います

こんな人におすすめ

「青の炎」はこんな人におすすめです

  • 心理描写が細かい作品が好き
  • 殺人を犯すと人はどんな精神状態になってしまうのか興味がある
  • 切ない物語が好き

あらすじ

あらすじを簡単に紹介します

主人公は高校生の櫛森秀一(くしもりしゅういち)

母と妹との三人家族です

秀一には一つ悩みがありました

それは、自宅で同居している一人の男のことです

男の名前は曽根隆司(そねたかし)

母の元夫で、現在戸籍上のつながりはありません

曽根は、母と結婚するまではまともな男に見えていましたが、結婚すると同時に本性を現します

仕事はろくにせず、毎日酒を飲んで、母や子供たちに暴力を振るい、自分で稼いでいない金を勝手に持ち出す…

要するにクズです

そんな曽根と母は別居し、戸籍上の関係も他人に戻りました

しかし物語の数か月前から勝手に秀一家族が住む家に上がり込み、居座ってしまいます

振る舞いは当時の傍若無人なままです

警察は事件が発生しなければ動けませんし、離婚するときにお世話になった弁護士に相談しましたが、曽根が話し合いに応じようとしません

母は曽根に弱みを握られているようで曽根に対して強く出られず、妹の遥香は毎日曽根に恐怖しています

このままでは家族が壊れてしまうと思った秀一は、曽根の殺害を計画します

しかし、普通に殺したのではすぐ警察に自分がやったとバレてしまいまい、逮捕されるでしょう

その場合、残された家族がメディアや世間の目にさらされ、社会的に殺されてしまいます

「自分が捕まることは絶対にあってはならない…」

そう考えた秀一は、完全犯罪を実現できるよう、あらゆるプランを検討します

決行の当日―

アリバイ工作も行い、実行時に多少のトラブルはあったものの概ね計画通りに進み、証拠の隠滅も抜かりないと思った秀一でしたが、そのときはまだ自分が犯したミスに気づいていませんでした…

ネタバレあり感想

ここからはネタバレありで感想を書いていきます

「青の炎」未読の方はご注意ください

殺人を犯した人間の末路

秀一は義理の父親である曽根と、秀一の犯行に気づいて強請ってきた拓也の二人を殺害します

警察の捜査が進み、様々な状況証拠を突きつけられた秀一は、

「あとは自白があれば、自分が殺人を犯したことが立証されてしまう」

と危機感を覚えます

自分が逮捕されると、母親と妹がメディアや世間によって社会的に殺されてしまうと確信していた秀一は、自ら死を選びます

自白さえしなければ警察も状況証拠しか揃えられず、被疑者死亡という形で秀一の犯行が立証されることなく事件に幕を下ろせると考えたためです

秀一は家族を守るために人を殺し、家族を守るために自ら命を落としました

個人的に秀一には生きていてほしいと考えていたので、この結末はとても残念でした

秀一は殺人を犯す前は

「自分は人を殺してもそれをそこまで重く感じないのでは」

と考えていました

しかし、実際に曽根を殺害したあとから、少しずつ精神的に不安定になっていきます

殺害の瞬間は何度もフラッシュバックしますし、今まで見てきた景色が同じようには見えず、感情の起伏も激しくなっていきました

そして、邪魔者を排除する手段として殺人という選択肢が増えてしまったことで、拓也の殺害に容易に踏み切れてしまいます

曽根は電流を流して殺害しましたが、拓也はナイフで刺殺しました

そのときの人を刺した感触がいつまでも秀一に残り続けています

また、人を殺したことは誰にもバレるわけにはいきません

秀一は自分の行動とそれによって生じた感覚や感情に、孤独で向き合わなければなりませんでした

まともな人間だったら耐えられませんよね

そして、秀一はまともな人間でした

警察にも追い詰められてあとがなくなり、自らを開放したいという気持ちもあったのかもしれません

普通の精神性を持つ人間が殺人を犯すとどんな風になってしまうのかがよくわかります

秀一は悪か

個人的には秀一は悪だとは思えません

二人目の拓也に関しては殺人ではない手段があったのではとも思いますが、少なくとも一人目の曽根は死んで当然の人間だったと思います

曽根自身は末期がんだったらしく、放っておいても数か月後には死んだという設定があります

秀一はその事実を曽根の殺害後に知ることになるのですが

しかし、四六時中家族に恐怖と暴力を与え続ける曽根とあと数か月暮らしていたら、家族が先に壊れていたかもしれません

一刻も早く曽根を排除したいと思うのは当然です

それに、秀一は曽根殺害前に警察に頼ること、弁護士に相談することを検討し、警察は事件が起こらないと動かないこと、弁護士は曽根が突っぱねて話し合いにならなかったことを確認しています

他に手段がない中で殺人を選ばざるを得なかったと言えます

また、秀一が悪人だったとしたら、最終的に自殺はしなかったと思います

同じ作者の「悪の教典」のシリアルキラーのように、人を殺すことをなんとも思っていなければ、心神喪失を装って生き長らえることもできたはずです

悪人ではない普通の人間だったからこそ、秀一は苦悩し続けたのだと思います

まとめ

今日は小説「青の炎」を紹介しました

男子高校生が完全犯罪に挑む、とても切ない小説です

普通の人間が人を殺すとどうなってしまうのか、詳細な心理描写で表現されています

興味があれば読んでみてください

今日も最後まで読んでいただいて、ありがとうございました!

コメント

タイトルとURLをコピーしました