【最終章で見方がひっくり返ります】小説「シャイロックの子供たち」感想

小説

こんにちは! パドルです

今日は最近小説「シャイロックの子供たち」を読んだので、紹介記事を書きます

作者は池井戸潤です

「半沢直樹」や「下町ロケット」など、数々のドラマ化映画化原作を執筆されている有名な小説家ですね

「シャイロックの子供たち」も2023年2月17日に映画が公開されます

設定とあらすじ

「シャイロックの子供たち」は東京都大田区にある東京第一銀行長原支店に勤める銀行員たちの物語です

小説は十話構成で、一話ごとに主人公が異なります

各話の主人公がそれぞれの悩みや思いを抱えながら銀行で働く姿が描かれます

また、「シャイロックの子供たち」にはミステリー要素もあります

あるとき、銀行から現金百万円が紛失してしまうという事件が発生してしまいます

そして、事件から数週間たったある日、一人の銀行員が失踪してしまいます

毎話違う主人公の視点からこの事件のことが語られるにつれて、事件の全体像と真実が次第に明らかになっていきます

特に、最後の第十話は注目です

みどころ

ここからはネタバレなしでみどころを紹介していきます

百万円紛失事件

先ほども少し触れましたが、この小説の中心となる事件が百万円紛失事件です

銀行では一日の終わりにその日全体の入出金と残高が合っているか確認するのですが、そのときに百万円が足りないことが明らかになります

行員全員で捜索しますが、百万円は出てきません

やむなく個人に荷物チェックに踏み切ると、ある女子行員(北川愛理)の荷物の中から帯封が発見されました

帯封とは、百万円を束にするときにそれらをまとめておく紙のことです

愛理は帯封に心当たりがないのですが、家が裕福ではないこともあって疑われてしまいます

その愛理をかばってくれたのが、上司である西木でした

騒動がひと段落して、西木は犯人を捜すため、独自に事件を調べ始めます

ところが、この事件、単純には解決しません

事件をきっかけに今まで明るみに出なかった事実が次々と明らかになり、新たな事件に派生してしまいます

真実はどこにあるのか、最後まで目が離せません

二十年前の価値観

「シャイロックの子供たち」は2006年1月に単行本が刊行されています

以外に年季の入った作品ですね

物語の時代設定も2000年代初頭くらいだと思われます

この小説を読むとその時代の社会人の価値観がよくわかります

私は第一話を読んだときに、今の自分との価値観の差に衝撃を受けました

第一話の主人公は、長原支店副支店長の古川です

この古川の第一目的は「出世」です

出世するためには支店として業績を上げなければなりませんが、古川はそのために手段を選びません

部下に顧客の利益にならない商品を売れと迫り、それに反抗した部下を殴ります

その部下が警察に被害届を出すと言うと、

「この程度で被害届を出すなんておかしいのではないか」

と本気で考えます

また、部下が実績を上げられないと他の行員がいる前で罵倒します

今の時代では考えられない所業ですし、私は古川のことを完全なサイコパスだと思ってしまいます

今から二十年前はこんな価値観がまかり通っていたのかと思うと、その環境を生き抜いてきた両親には頭が下がる思いです

古川の例は極端なのですが、「シャイロックの子供たち」を読むことで、二十年前の社会人が何を信条にして働いていたのかを知ることができてとても面白いです

ネタバレあり感想

ここからはネタバレありで感想を書いていきます

小説未読の方、映画を観る予定のある方はご注意ください

事件の真相

この物語の事件は複雑に絡み合っています

現金百万円紛失事件がすべてのきっかけとなりますが、それを発端に架空融資やそれの発覚を恐れた口封じのための殺人事件にまで発展します

しかし、第十話でその殺人が実行されたかが怪しくなってきます

百万円事件の犯人捜しをしていたのは西木でしたが、その西木は数週間後に失踪してしまいます

第九話まではその西木は殺されているだろうという見方が強かったのですが、第十話にしてそれが疑わしくなります

それどころか、西木が別人に成りすますために殺害されることを利用したのではとも思えてきます

百万円事件の犯人は滝野という男で、事件をきっかけに架空融資をしていたことがバレそうになって西木の口封じを決意するのですが、その融資先の社長(石本)と西木は知り合いでした

滝野は西木に手を下したのは石本だと証言しており、滝野自身は何もしていません

事件の後石本は行方不明となっています

また、滝野が会社の債務返済用だと言われて石本に架空融資した五億円は、実際にはその用途には使われておらず、使用用途は不明です

「これは石本と西木が滝野を利用して、金を自分のものにしたのではないか」

と第十話の主人公は疑問に思います

西木は兄の会社の連帯保証人になっており、兄と合わせて十億円の負債を抱えることにもなっていました

それが理由で妻、子供たちとも別居中で、妻からは高額の慰謝料を請求されていたところでした

こんな状況であれば、大金を得て別人になることを画策してもおかしくありません

物語中では真実ははっきりとは描かれませんが、個人的には西木が黒幕だった説を信じています

「シャイロックの子供たち」では、西木はさまざまな人物として描かれます

いつもは少しふざけているが、百万円事件のときは愛理の疑いを晴らそうとした部下にやさしく自分より上の立場の人にもものが言える立派な上司

キャリア初期は順調に出世コースを歩んでいたが、あるときを境に出世コースから外れてしまったうだつの上がらない男

自分のデスクに家族の写真を飾っている、家族第一の男

かと思ったら、家族とは別居中で借金の連帯保証人にもなっている寂しく不幸な男

そして、事件の黒幕…

「シャイロックの子供たち」のように主人公が毎回変わるからこそ、さまざまな視点から西木という男が掘り下げられています

それが西木の魅力を一層増しています

まとめ

今日は小説「シャイロックの子供たち」を紹介しました

映画の主人公は西木のようで、阿部サダヲさんが演じられています

また、映画は小説とは違った結末になるとのことです

どんなストーリー展開になるか楽しみですね!

もし興味を持たれて、映画が待ちきれない方は小説を読んでみることをおすすめします

今日も最後まで読んでいただいて、ありがとうございました!

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