【0.1%に挑むリーガルミステリー】小説「法廷遊戯」紹介

小説

こんにちは!

今日は最近読んだ小説「法廷遊戯」を紹介します

五十嵐律人による作品で、ロースクールと法廷を舞台にした物語です

11月には映画の公開も予定されています

作者が弁護士ということもあり、法律用語のオンパレードになっています

主人公である清義(きよよし)が弁護士になり、とある被疑者で被疑者となった、幼馴染である美鈴(みれい)を救うために奮闘します

しかし、美鈴は清義にも話していない重大な秘密を隠していて、それが裁判中に明らかになったときに法廷に衝撃が走ります

果たして美鈴が隠していた秘密とは…?

こんな人におすすめ

「法廷遊戯」はこんな人におすすめです

  • 法律用語が飛び交う作品が好き
  • ミステリーが好き
  • 深く考えさせられる作品が好き

あらすじ

あらすじを簡単に紹介します

主人公は法都大ロースクールに通う清義

彼は身よりがなく児童養護施設の出身です

その施設で一緒だった美鈴と一緒にロースクールに通っています

清義が通うロースクールでは、「無辜(むこ)ゲーム」というゲームがときどき開催されていました

「無辜ゲーム」は簡単にいうと模擬裁判です

まず加害者が被害者に対して刑罰に触れるような行為を行います

例えば、被害者のお金を盗むなど

そのときに天秤のマークが入った紙を被害者が気づくように置いておきます

これが無辜ゲームを仕掛ける合図です

被害者はゲームを受ける場合、自分で加害者を特定し、加害者の犯行を客観的な証拠に基づき立証する必要があります

その立証が確からしいと審判者が判断すると、加害者には同害報復の考え方に則った罰が審判者与えられます

同害報復とは、ハンムラビ法典のような「目には目を」の考え方です

つまり、お金が盗まれた場合は、盗まれたのと同じ額を被害者に弁償することになります

無辜ゲームで審判者の役割を担っているのは結城馨(ゆうき かおる)

彼は非常に優秀で、学生の身でありながら既に司法試験に受かっています

周囲からの信頼も厚く、清義も馨を頼りにしています

あるとき、清義に対して無辜ゲームが仕掛けられました

その内容は名誉棄損で、清義が施設出身であることと、過去に傷害の非行歴があることが書かれたメモがロースクール内にばらまかれました

その無辜ゲームが決着した後、今度は美鈴に無辜ゲームが仕掛けられました

美鈴の住むアパートのドアにアイスピックが突き立てられており、清義と同じく施設出身であることと、女子高生が痴漢詐欺をしていたという新聞記事が郵便受けに入っていました

美鈴はこの無辜ゲームを受けることはありませんでした

一方、清義は実行犯を突き止めることに成功しますが、犯行を依頼した黒幕を突き止めることはできませんでした

嫌がらせは二週間ほどで終わり、真相は闇の中です

無辜ゲームもそれ以降開かれることはありませんでした

その後月日が経ち、清義が弁護士となって研修を終えたころ、馨からメールが届きます

「久しぶりに無辜ゲームを開催するから来てほしい」

という内容で、美鈴も行くとのことでした

清義が模擬法廷に到着すると、そこには馨と美鈴の姿しかありませんでした

しかも、馨は胸から大量出血している状態で倒れていて、美鈴は返り血を浴びてナイフを持っています

状況が飲み込めない清義に美鈴は

「私は馨を殺してない。だから私を弁護して」

と言います

果たして、清義は美鈴を無罪に導くことができるのでしょうか?

ネタバレあり感想

ここからはネタバレありで感想を書いていきます

小説未読の方はご注意ください

日本の司法制度

個人的には、この作品の一番のテーマは

日本の司法制度の不完全さ

にあると思います

馨の死は狂言でした

というのも、馨にはある目的があったのです

それは、

  • 父の冤罪を晴らすこと
  • 父を陥れた人物に復讐すること

の二つです

馨の父は警察官でしたが、馨が亡くなる一か月前に自殺してしまいました

とある事件で有罪判決を受けてしまい、精神的に追い詰められてしまったのです

罪状は女子高生に対する迷惑防止条例違反、つまり、痴漢です

その痴漢の被害者が美鈴でした

しかし、馨の父は実際には痴漢をしていません

清義と美鈴によって陥れられたのです

施設出身者でお金がなかった二人は、痴漢詐欺をすることでお金を稼いでいました

痴漢詐欺とは、実際には痴漢をされていないのにされたと騒ぎ、示談金を請求する、というものです

その最後のターゲットとなってしまったのが馨の父親でした

馨は父親の無罪を信じ、清義と美鈴に復讐するために二人に近づきました

無辜ゲームの一部も、二人が父親を陥れたという証拠集めに利用しました

二人がやったと確信できた馨は、美鈴を加害者、自分を被害者にして事件を起こします

そして、美鈴の無罪を証明するために、過去に清義と美鈴がやっていた痴漢詐欺に触れざるを得ない状況を作り出したのです

また、馨は美鈴に犯行をやらせる瞬間をビデオカメラで録画していました

この映像があれば美鈴の無罪は確定です

しかし、馨は美鈴に、裁判が開かれるまではこの証拠を開示しないことを要求します

ここに、馨のもう一つの目的が関わってきます

馨のもう一つの目的は

「父の冤罪を晴らすこと」

でした

冤罪を晴らすためには、一度決着がついた裁判をやり直す「再審」が必要です

ですが、一度判決が出た裁判をやり直すことはそうそうありません

警察も検察も裁判所も、過去の判決は絶対のものとします

仮にそれが覆るような証拠が出たとしても、基本的にはその証拠が間違っていると判断します

ビデオカメラによる録画映像を逮捕された時点で警察に見せれば、美鈴は確実に不起訴になっていました

しかしそれでは「再審」にはつなげられません

警察は馨による、自分の父親は冤罪だったという主張を間違っているものと判断するはずです

検察官の取り調べ時にその証拠を出しても、同じように扱われると思われます

したがって、この証拠は公開の場である裁判のときに初めて出す必要がありました

美鈴は馨の要求を呑み、その証拠については裁判のときまで誰にも話しませんでした

清義は証拠の存在を知っていましたが、映像が記録してあるSDカードのパスワードは教えられていませんでした

法律を熟知した馨による周到な計画は、こうして実を結ぶことになったのです

「美鈴は清義に弁護を頼んだくせに、何で大事なことをずっとぼかしているんだ?」

と私は疑問に思いながら読み進めていたのですが、証拠を開示するタイミングがとても重要だったんですね

作者が弁護士であるからこそ仕掛けられる謎と真実に感心させられました

同時に、日本の司法制度の不完全さと面白さも感じました

まとめ

今日は小説「法廷遊戯」を紹介しました

本格的なリーガルミステリーで、法律用語が飛び交う難しさはありますが、そういうのが好きな人にはとても楽しめる作品です

個人的にはドラマの「HERO」やゲームの「Lost Judgement」が好きなので、かなり面白く読めました

機会があれば読んでみてください

今日も最後まで読んでいただいて、ありがとうございました!

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