こんにちは! パドルです
今回は最近読んだ小説の「六人の嘘つきな大学生」を紹介します
浅倉秋成による小説で、2022年の本屋大賞ノミネート作品です
とある企業の最終選考に進んだ六人が、たった一つの内定枠を誰にするか決めるためにグループディスカッションに臨みます
しかし、そこで六人の過去の悪事を暴露する封筒が見つかり、グループディスカッションは予想もできない方向に進んでいきます
こんな人におすすめ
「六人の嘘つきな大学生」はこんな人におすすめです
- 就活をしたことがある
- ミステリーが好き
- スッキリとした読後感の物語が好き
あらすじ
簡単にあらすじを紹介します
舞台は2011年の東京
主人公は就活生の波多野祥吾
彼は絶賛就活中で、スピラリンクスという会社の最終選考まで進みました
スピラリンクスは先進的なIT企業で、新しい事業をどんどん展開し、急成長している会社です
就活生であれば誰もが憧れます
そんなスピラリンクスの最終選考には六人が残りました
最後の課題はスピラリンクスが実際に抱えている問題を六人で解決するというもので、六人がチームとして機能するために一か月の準備期間が設けられました
そのときは六人全員に内定の可能性があると説明されていたため、六人は最高のチームを作るために努力します
そして全員の信頼関係が深まってきたころ、スピラリンクスから地獄のようなメールが届きます
「先の東日本大震災の影響で採用枠を減らさざるを得ず、一人のみに内定を出すことにしました」
「内定者はグループディスカッションの場で他薦して選んでいただきます」
せっかくここまで信頼関係を積み上げ、全員で内定を取ろうと意気込んでいたのに…
最終選考当日を迎え、六人全員が着席した際、入口付近に奇妙な封筒が置かれているのを発見します
封筒は六人それぞれ別のものが用意されていました
一人が封を開けてみると、そこにはと六人のうちの一人の悪事が書かれていました
告発文によると、その人物が過去にいじめで被害者を自殺に追い込んだというのです
そして、封筒には次の人物の告発文がどの封筒に入っているかも書かれていました
この封筒の存在によって、六人の信頼関係は崩壊し、お互いに疑心暗鬼になります
そしてそれぞれの悪事が明らかになっていきます…
果たして、誰がこの封筒を仕掛けたのでしょうか?
そして、内定を取ったのは誰なのでしょうか?
ネタバレあり感想
ここからは「六人の嘘つきな大学生」の感想をネタバレありで書いていきます
未読の方はご注意ください
予想を裏切られ続ける展開と細やかな伏線回収
「六人の嘘つきな大学生」は二部構成になっています
前半は2011年の最終選考までを描き、後半は2019年のそれぞれが社会人になってからを描いています
2011年の主人公は波多野祥吾
結局、彼はグループディスカッションで封筒を仕込んだ犯人に仕立て上げられてしまいます
彼が犯人ではないことがわかっているのは本人と読者だけで、他の5人は全員波多野のことを犯人扱いします
この過程は読んでいてとても心がざわつき、嫌な気分になります
また、波多野が追い詰められている中で真犯人の候補が絞られていくのですが、読者のほとんどは、ある人物に疑いを向けます
それは
「嶌衣織」
という人物です
彼女も最終選考に残ったメンバーですが、波多野は彼女に好意を寄せていました
その彼女が波多野の好意を利用して波多野を犯人に仕立て上げた疑いが強まり、より気分が落ち込みます
そして彼女はスピラリンクスの内定を手にします
真犯人の思惑どおりに事がすすんでしまった、ととても悔しい気持ちになります
しかし、嶌は犯人ではありませんでした
ここで、読者は一度裏切られます
私も完全に嶌が犯人だと思っていました
第二部は嶌が真犯人を明らかにするストーリーになるのです
最終的に真犯人をつきとめることに成功しますが、実は第一部の段階で、それに通じる手がかりはそこかしこに配置されていました
その細かな伏線が段々と回収されていく様は見事です
実は私には一般の読者よりも真犯人の仕掛けに気づきやすい有利な点があったのですが、残念ながらそれを活かすことはできませんでした…
冒頭の文章
第一部の冒頭は波多野の言葉から始まり、そこには
「犯人はわかりきっている」
と書かれています
第一部の終盤では読者は犯人が嶌だと思わされているので、てっきり波多野も嶌を犯人だと思っているのだという印象を受けますが、実は波多野には真犯人がわかっていました
波多野は
「犯人、嶌衣織さんへ」
という手紙を残しており、素直に読んだら嶌衣織を犯人だと信じているように読めます
しかしこれもミスリードでした
この宛名、読点によって実は犯人と嶌衣織両名に宛てられたものだと明らかになります
こういう細かいミスリードも散りばめられていて、後にそれが伏線であるとわかったときの爽快感につながります
就活という制度
この小説では、物語と並行して
「企業は採用選考で実際に優秀な人材を選抜できているのか?」
という疑問が投げかけられています
小説内では
「できていない」
という意見が示唆されていますが、私も同感です
作中でも言及されていますが、基本エントリーシートに書いていることは事実の誇張か、ひどい場合は嘘です
また、数十分間の面接でその人がどんな人物かなんてわかるはずもありません
私にも以前ちょっとした面接官をやる機会があったのですが、どの方も良さそうに感じて甲乙はつけられませんでした
また、面接での印象が良いことと、実際に仕事ができることは何の関係もありません
つまるところ、面接で良い評価を受けるのは、そのときの面接官に良い印象を与えられるかで決まる、運ゲーです
何が言いたいかというと、
「面接する側も割と適当だから、もっと気楽に就活すればいいんじゃないか?」
ということです
就活で非採用通知が送られてくると自分が否定された気分になるときがあります
実際私も就活のときは全くどこにもひっかからず落ち込みました
しかし、社会人になって思うのは、先ほども書いたとおり
「面接の出来と実際の仕事の出来は全く関係ない」
ということです
また、現代は一つの企業でずっと働き続ける時代でもないので、今志望する企業に入れなかったからといって落ち込む必要はありません
他の企業のほうが自分に合っているかもしれませんし、どうしても入りたければ転職して入るという手もあります
学生から社会人になるタイミングの就活だけで人生が決まることはあり得ません
まとめ
今回は「六人の嘘つきな大学生」を紹介しました
ミステリーとしても面白いですし、就活を経験したことのある方なら
「こんな感じだったよな~」
と思いながら読めると思います
これから就活される方も、読んでみると
「就活ですべてが決まるわけではない」
と思えるのではないでしょうか
機会があれば読んでみてください
今日も、最後まで読んでいただいてありがとうございました!
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