【50年前に書かれたお手本のような伏線回収】小説「模倣の殺意」紹介

小説

こんにちは! パドルです

今回は最近読んだ小説の「模倣の殺意」を紹介します

中町信による作品で、書かれたのは昭和48(1973)年です

本屋で平積みされているのを見つけたので読んでみることにしました

「模倣の殺意」は、坂井正夫という売れない小説家が亡くなった事件の真実を明らかにする物語です

彼の死は警察には自殺と判断されたのですが、彼と親交のあった中野秋子という女性編集者と、津久見伸助というフリーのルポライターは他殺ではないかと疑います

そこで二人はそれぞれ単独で事件の謎を解き明かそうとします

物語は二人の視点を行き来しながら進んでいき、それぞれ違った人物を犯人であると疑い始めます

どちらの考え方も正しく思えて読者は次第に混乱していくのですが、やがてそれが壮大な伏線だったことが明らかになります

「なるほどなー!」と思うこと間違いなしです

こんな人におすすめ

「模倣の殺意」はこんな人におすすめです

  • ミステリーが好き
  • 驚きのある展開が好き
  • アリバイ崩しが好き

あらすじ

簡単にあらすじを紹介します

事件は昭和40年代後半の東京で起こります

七月七日、坂井正夫という人物が亡くなります

警察が調べたところによると、青酸カリを服毒した後に苦しみに耐えられず窓から落下したとのことです

つまり、自殺です

しかし、この自殺に疑問を持った人物が二人いました

一人は中田秋子

出版社に勤める編集者で、坂井正夫とは懇意にしていました

秋子が他殺を疑った理由は、坂井の家である原稿を見かけたことが理由です

そのタイトルは

「七月七日午後七時の自殺」

まるで死を予言するかのようなタイトルが気にかかっていたのですが、坂井正夫はまさにその日のその時刻に亡くなっていました

警察はそれを遺書だと判断したようですが、秋子はそれを遺書に見せかけた誰かの手によって殺されたのでは、と考えます

独自に調査を進めていく過程で、遠賀野律子という人物の存在に行き当たります

しかし、律子には決定的なアリバイがあるように思えました

秋子は律子のアリバイを崩しにかかります

もう一人の人物は、津久見伸助

フリーのルポライターで、坂井正夫と親交がありました

彼が坂井正夫は自殺ではないと考えた理由は、坂井の死の数日前に、坂井から小説を書いているという話を聞かされていたからです

津久見も独自に調査を進め、坂井に恨みを持っていると思われる柳沢邦夫という人物に行き当たります

しかし、柳沢にも鉄壁と思われるアリバイがありそうです

津久見は柳沢のアリバイを崩しにかかります

果たして、坂井正夫を死に追いやった人物は誰なのでしょうか?

全く予想できない結末が待っています

ネタバレあり感想

ここからはネタバレありで感想を書いていきます

「模倣の殺意」未読の方はご注意ください

二人の視点と作者の仕掛け

この物語は秋子と津久見の二人の視点で進んでいきます

なぜ二人の視点が必要かというと、

「読者を騙すため」

です

実は秋子が追っている坂井正夫の事件と、津久見が追っている坂井正夫の事件は別物でした

坂井正夫という同姓同名の二人が1年の間隔を置いて亡くなっていたのです

だから二人はそれぞれ違う人物を疑い、その人物のアリバイを崩すことに注力していました

読者としては

「どちらの推理が正しいんだろう…?」

と思わせられて読み進めますが、そもそも別の事件だったと明かされて

「え…?」

と驚愕します

二人が追っていた人物にはどちらも崩れそうで崩れないアリバイがあって、読んでいる側としてはそれがどのように崩されていくのかを期待しながら読んでいました

その期待が良い具合に裏切られます

しかもそれぞれの事件が1年ずれているのですから、さらに驚きは増します

私はこのような時間差トリックが好きなので、一人で勝手に興奮してました

この一年ずれているということが理解できると、各章の始まりに

「七月七日」

のように日付が書かれていることも、ミスリードを誘う一つの仕掛けだと気づかされます

同時に、この物語の本質がアリバイ崩しではなく叙述トリックであることがわかります

物語内でトリックが完結するミステリーも好きですが、叙述トリックは読者の思い込みを利用して騙してくるので驚きがより大きい気がしています

事件の真相だけ考えてみると、この物語のオチは正直大したことはないと私は感じました

秋子が追っていた坂井は本当に自殺していましたし、津久見が追っていた事件の犯人は秋子でした

秋子の動機もあっさりと描写されていて、個人的にはそこまで共感できませんでした

物語の真実に大したインパクトを感じられないほどに、叙述トリックが鮮やか過ぎたのかもしれません

まとめ

今日は小説「模倣の殺意」を紹介しました

50年前に書かれた小説ですが、物語の仕掛けは今でも通用するほどに新鮮です

物語の舞台が50年前ですので、スマホや固定電話すら存在していない時代設定ですが、それが原因で小説の面白さが損なわれることはないと思います

機会があれば読んでみてください

今日も最後まで読んでいただいて、ありがとうございました!

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