【終盤で物語のイメージが一変します】小説「葉桜の季節に君を想うということ」感想【衝撃の伏線回収】

小説

こんにちは! パドルです

今日は最近読んだ小説「葉桜の季節に君を想うということ」を紹介します

タイトルからは恋愛小説かな?と想像されますが、メインストーリーは探偵ものです

主人公の知り合いの親戚が事故死してしまったのですが、知り合いは事故死ではないと考えていて、主人公に事件の真相の調査を依頼します

徐々に真相が明らかになるにつれて、どんどん物語に惹き込まれていきます

そして伏線回収が絶妙な作品でもあります

私は終盤の展開が予想外過ぎて、混乱してしまいました

早く読み進めたいけど、状況が頭の中で整理できていないため少し読むのをやめて落ち着きたい、という矛盾した考えが脳内を占めていました

とても奇妙な感覚でしたが、本当に面白くて予想外の物語に触れるとこうなってしまうのかもしれません

こんな人におすすめ

「葉桜の季節に君を想うということ」はこんな人におすすめです

  • スリルのある展開が好き
  • きれいに伏線回収される作品を求めている
  • 小説が好き

ちなみに私は特に二番目の理由でこの作品を読みましたが、伏線回収があるとわかっていても物語の真実に度肝を抜かれました

あらすじ

「葉桜の季節に君を想うということ」のあらすじを紹介します

主人公は複数の仕事を掛け持っている成瀬将虎

好色家でジムに通って体を鍛え、パソコン教室の講師をこなし、ガードマンをするなどアクティブに暮らしています

将虎には探偵事務所で働いていた経験があり、それを訊いた久高愛子という女性からある仕事を依頼されます

愛子の家族である久高隆一郎が先日事故死してしまったのですが、その死は不可解なものでした

また、隆一郎は晩年蓬莱倶楽部という団体から様々なものを高値で購入していたことも明かされます

布団一組100万円、500mlのペットボトル1本2万円など…

また、いつのまにやら隆一郎には保険がかけられていて、その受取人が家族も知らない企業になっていたのです

「もしかしたら隆一郎は事故に遭ったのではないのかもしれない…」

そう思った愛子は、将虎に事件の真相を探るよう依頼しました

それと前後して、将虎はある女性と出会います

彼女の名は麻宮さくら

駅のホームに身を投げたところを将虎が救ったのでした

その後お礼がしたいと彼女にお茶に誘われ、その後も会っていくうちにだんだんとさくらのことが気になり始めます

果たして久高隆一郎の事件にはどのような真相が隠されているのか、そして将虎とさくらの関係はどのように着地するのか、物語は展開していきます

魅力紹介

ここからは、「葉桜の季節に君を想うということ」の魅力を、ネタバレなしで紹介していきます

張り巡らされた伏線

この物語の一番の魅力は、張り巡らされた伏線です

物語すべてに伏線が張られていて、それが終盤にきれいに回収されます

主人公の将虎とさくらの出会いから、事件の真相の解明に至るまで、どこもかしこも伏線だらけです

この物語の素晴らしいところは、伏線を伏線と感じずに読み進められるところにあります

しかし真実が明らかになったときには何気ない描写が伏線であったことを読者が認識できるような構成になっています

私も読み進めている途中で違和感を覚えた描写がいくつかありましたが、

「そういう設定なのか、まあ、納得はできるよな」

と受け流していました

その描写こそまさに伏線だったわけですが…

違和感を覚える描写は読む人それぞれあると思いますが、真相がわかればその違和感はすべて解消されるはずです

メインストーリーとサイドストーリーの関係性

「葉桜の季節に君を想ふということ」は、将虎が久高隆一郎の死の真相を調査する話がメインストーリーになっていますが、サイドストーリーも展開されます

メインストーリーが1章進むごとにサイドストーリーが1章挟まる、という構成です

そのサイドストーリーは、将虎の過去編であることもあれば、そこで初めて登場する人物の物語であることもあります

このサイドストーリーの物語が現在の将虎にどのような影響を及ぼしているのか、サイドストーリーに登場する人物がどのようにメインストーリーに関わってくるのか、すべての章に読み応えがあります

ネタバレあり感想

ここからは「葉桜の季節に君を想うということ」の感想をネタバレありで書いていきます

小説未読の方はご注意ください

ちなみに、この物語はネタバレされてしまうとよくある探偵ものに成り下がってしまうので、ご自身で最後まで読まれることを強くおすすめします

真相がわかったときの衝撃

真相がわかったときの衝撃はものすごいものでした

私が小説を読み進めている中で創り上げてきた将虎のイメージが、完全に崩れ去ってしまったからです

私の中の将虎は、20代中盤から後半のイメージでした

アクティブ、好色家、自分勝手なところもあるが正義感が強く、感情のアップダウンも少なからずある

そして、さくらに恋してしまう

どう考えてもこれらの特徴は20代からせいぜい40代くらいまでだと思えます

しかし将虎は70歳でした

この真相は、さくらが将虎を

「あなたは安藤士郎ではない…?」

と確認するところから徐々に明らかになります

安藤士郎とは将虎が講師を務めるパソコン教室の生徒で、高齢者でした

将虎を若者だと考えている私からすると、さくらの発言の意図が理解できません

「どうして若い将虎と高齢者の安藤士郎を間違えるんだ…?」

ここで一旦頭の中はパニックになります

そして今まで20代だと考えていた主人公が実は70歳だったことが判明します

ここまで完璧な叙述トリックを私は体験したことがありません

将虎の人物像描写から読者に勝手に若い年齢層を想像させ、高齢者であるという真実を突きつける

加えて、将虎と近しい登場人物も年齢が明かされていなかった人物が高齢者であることが次々とわかり、もう大混乱です

しかし、それらの人物すべてに納得のいく説明が用意されています

見事としか言いようがありません

思えば、このしかけは冒頭の描写から始まっていました

あのシーンで将虎は若者だと私はイメージしてしまったのですが、今から考えると将虎が気だるそうにしていたのも納得です

小説の1行目から伏線回収のためのミスリードは始まっていたのでした…

タイトルの意味

この小説のタイトル「葉桜の季節に君を想うということ」、とてもおしゃれですよね

冒頭にも書きましたが、タイトルだけ見たら恋愛小説です

しかし、物語の中心は久高隆一郎の死の真相を追うストーリーなので、基本的には探偵ものです

私もこのタイトルの意味は最後の最後になるまでわかりませんでした

意味がわかったあとは、このタイトルのことをよりおしゃれに感じられました

「葉桜の季節」とは、高齢者になった将虎のことを指し、「君を思うということ」はさくらに恋をしてしまったことを指します

物語の中で人間の一生を桜に例える場面があります

それになぞらえるならば、高齢者になってしまった将虎は満開後の葉桜にあたります

人生の最盛期を過ぎてしまっても、新しく誰かを想うこともできれば、未来に希望を持つこともできる

「自分の人生の中で最も若いのは今日だ」

という言葉がありますが、将虎の生き方や考え方はそれを表している気がします

個人的には将虎と同じ年齢になったらもう少し精神的に落ち着いていたいですが、行動力は見習いたいです

まとめ

今日は小説「葉桜の季節に君を想うということ」を紹介しました

驚きの展開や伏線回収が見事な作品を求めている方にはぜひとも読んでいただきたい作品です

この小説の最大の魅力は伏線回収にあります

物語が結末を迎えても登場人物たちが抱えている根本の問題が解決されることはありませんので、ストーリーだけを見ると物語の途中で終わっている感が否めません

しかし、それを不満に感じさせないくらいの驚きを味わうことができます

機会があればぜひ読んでみてください!

今日も最後まで読んでいただいて、ありがとうございました!

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