【映画に触れる前に必ず小説を読むべき】小説「ロスト・ケア」感想

小説

こんにちは! パドルです

今日は小説「ロスト・ケア」の紹介と、感想について書いていきます

「ロスト・ケア」は葉真中顕によって書かれた小説で、この作品は2012年の第16回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞しています

また、小説を原作にした映画「ロストケア」が2023年3月24日に公開予定です

いつもならここで映画の予告編を貼るのですが、映画は予告編の時点で物語の一番面白い部分をネタバレしていたので、貼らないことにしました

この物語を一番楽しんでもらいたいので、小説を読み終わるまでは映画の情報を一切入れないことを強くおすすめします

あらすじ

ここからは「ロスト・ケア」のあらすじを簡単に紹介します

舞台は日本のX県八賀市で、物語は複数の登場人物の視点から語られます

検事である大友秀樹

大友の学生時代の友人で「フォレスト」という介護ビジネスを展開している企業に勤める佐久間巧一郎

認知症の母の介護に疲れ果てていた羽田洋子

「フォレスト」の八賀ケアセンターで働く斯波宗典

そして、延べ43人をこの世から消してしまった<彼>

<彼>は何のために43人も手にかけたのか、<彼>はいったい誰なのか…

それらを解き明かしながら、物語は進んでいきます

みどころ

物語のテーマ

「ロスト・ケア」では物語全体を通して、あるテーマが取り上げられています

それは

今の介護制度の限界

です

<彼>が手にかけたのは、介護が必要で一人では身の回りのことができない高齢者たちでした

羽田洋子の母も<彼>に処置されましたが、その母は認知症で、調子が悪ければ娘のことを認識できない状態でした

「ロスト・ケア」ではこのような家族介護の不幸を詳細に描いています

また、介護制度と実際の介護サービス現場の実態の矛盾も取り上げており、フィクションでありながら現実の問題を突きつけられている気になります

<彼>の正体

<彼>は誰なのか

ということもこの物語の重要なポイントです

私はミステリー小説を読んだり、ミステリー映画を観るときは、誰が犯人なのかを予想しながら物語を楽しみます

犯人を当てられることは少なく、今回の「ロスト・ケア」も当てることはできませんでした

普通のミステリー作品であれば、犯人を当てられなくても

「ふうん、この人だったんだ」

程度の感想しか持たないのですが、「ロスト・ケア」では犯人が明らかになったときの衝撃がとても大きかったです

犯人がわかったときは

「ええ!? この人だったの!?」

「でも、そうなるとあのときのシーンはどう説明されるんだろう…」

と少し頭が混乱しました

しかしその混乱は小説を読み進めていくことで解消され、最終的にはスッキリすることができました

<彼>が誰なのかが明らかになるシーンはとても衝撃的ですので、ぜひ小説で楽しんでください

ネタバレあり感想

ここからはネタバレありで感想を書いていきます

小説未読の方はご注意ください

<彼>は間違っている? それとも…

「ロスト・ケア」で犯人の<彼>は43人も手にかけています

しかし、<彼>は一貫して自分の行いを「正しい」と主張していました

なぜなら、<彼>の行為は結果的に介護する側と介護される側の両方を苦しみから救っていたからです

介護する側は自分のことわからなくなっている親を介護することに苦痛を感じています

自分の子供に介護されていることを認識できないため、親から感謝もされません

あまつさえ自分のことを他人と認識して介護中に暴れられてしまうこともあります

たとえ相手が自分を育ててくれた親であっても、そのような状態が続けば精神的に疲弊しますし、親を介護するという状況から抜け出したいと思うのも無理ありません

介護される立場からしても、自分がわからなくなって子供のことも認識できなくなり、自分が制御できず子供に迷惑をかけるのは耐えられないことです

この二人の苦しみは、何もなければ親が天寿を全うするまで続いたはずです

その状況から二人を救った<彼>は、果たして悪なのでしょうか?

法律的に見ればもちろん裁かれるべきですが、個人的にはそれが悪の行いだとは思えません

「ロスト・ケア」の物語の中でも言及されていますが、そのような状態になっている社会の構造に問題があると思います

不完全な介護制度

この小説は事件を描くことで現代日本の「不完全な介護制度」を浮き彫りにしています

お金のある人は高級老人ホームに入って万全な介護を受けられますが、お金のない人は家族に介護してもらうしかありません

日本の少子高齢化はどんどん進んでいますので、介護の問題もどんどん大きくなっていくはずです「ロスト・ケア」に描かれている事件も現実に起こりえるかもしれません

そうならないためには、介護の制度を整えるとともに介護を必要としなくても良いくらい健康な人たちを増やす必要があると思います

制度を整えるのは政府の方々に任せるとして、まずは自分と家族が健康で長生きするようにできることをやっていかないといけませんね

まとめ

今回は小説「ロスト・ケア」を紹介しました

現代の日本が抱える「介護」という問題をテーマにしたミステリー作品です

ミステリー小説としても読みごたえがありますが、近い将来問題が顕在化するかもしれない「介護」について深く考えさせられる内容になっています

機会があれば、ぜひ読んでみてください!

繰り返しになりますが、小説を読み終えるまでは映画の情報に一切触れないことを強くおすすめします

今日も最後まで読んでいただいて、ありがとうございました!

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