【不可解なタイトルに込められた伏線】小説「QJKJQ」紹介

小説

こんにちは! パドルです

今日は最近読んだ小説「QJKJQ」を紹介します

佐藤究による小説で、第62回江戸川乱歩賞を受賞しています

殺人一家の一員である亜李亜(ありあ)が、兄が殺され、母が失踪した事件の謎を追いかけるミステリー小説です

そして、タイトルである「QJKJQ」の意味とは…?

こんな人におすすめ

「QJKJQ」はこんな人におすすめです

  • 複雑な物語が好き
  • なぜ殺人が起こるのかと考えたことがある
  • どんでん返しがある作品が好き

あらすじ

ここからは「QJKJQ」のあらすじを書いていきます

主人公の市野亜李亜は女子高生で、父、母、兄とともに暮らしています

しかし、ただの女子高生ではありません

この家族、一家全員が殺人鬼です

亜李亜はナイフを使って人を殺し、兄の浄武(じょうぶ)はマウスピースを口にはめて首を噛み切って殺します

母の杞夕花(きゆか)はシャフトを使って撲殺し、父の桐清(きりきよ)は相手の血液を抜いてその血を飲ませて窒息死させます

そして、地下室には誰のものともわからないミイラ死体が保存されています

こんな家族ですが、いたって普通に日常を過ごしています

亜李亜は学校に通っていますし、父は不動産会社に勤めていて毎日業界誌を読んでいます

母は専業主婦ですが、ターゲットを探しに出歩くことが多く、兄は自宅の部屋に引きこもっていますが、ターゲットには自ら自宅に足を運ばせるほどのコミュ力を備えています

ある日、亜李亜が2階に上ると、兄の部屋のドアが少し開いていることに気づきます

今まで必ずドアは閉まっていたため、少し不審に思った亜李亜は部屋に足を踏み入れます

そこで亜李亜が目にしたものは、兄の惨殺死体でした

パン切り包丁のものと思われる刺し傷が無数にあり、部屋に吊るされていました

亜李亜は自宅にいた両親を呼び、家の中にいるかもしれない犯人を捜し始めます

しかし誰も見つからず、次の日を迎えます

するとまたもや異変が…

母の姿がどこにも見当たらないのです

そのことを父に話しても反応は薄く、淡々としています

亜李亜は父のことを疑い始め、家を出て自分なりに事件を調べてみることにしました

果たして兄を殺した犯人は誰なのか?

母はどこへ行ってしまったのか?

二つの事件には父がかかわっているのか?

物語のいたるところに伏線が張られ、衝撃的な展開が待っています

ネタバレあり感想

ここからはネタバレありで感想を書いていきます

「QJKJQ」未読の方はご注意ください

タイトルの伏線

タイトルの「QJKJQ」、これだけでは意味がわかりません

私もさっぱりわからず、何を表現しているのか考えながら読み進めていきました

物語の中盤で、父がこの言葉を使います

そして、「QJKJQ」はトランプのカードであることが明かされます

Qがクイーン、Jがジャック、Kがキングです

一旦はなるほどと思いましたが、すぐに

「だから何なんだ…?」

と再び疑問がわきます

ポーカーであればただのツーペアですし、対照に並べられていることの説明も思いつきません

しかし、亜李亜が直面している現実と照らし合わせると、隠されて意味が見えてきます

亜李亜は兄が殺され、母が失踪したと思っていますが、実は二人は元々存在していません

正確に言うと、亜李亜が子供の頃に殺されてしまっています

亜李亜は辛すぎるその経験を忘れるために、母と兄が生きていると思い込んでいたのです

また、兄は実は人間ではなく、飼っていた犬でした

だから兄は人を噛むことで殺す殺人者という設定になっていたのです

亜李亜が、被害者だったQ(母)とJ(兄)を殺人者という反対の性質に逆転させた世界を作ったことを示す言葉が、

「QJKJQ」

なのです

ちなみに、Kは父を示しています

「父は健在だから一つだけで反転してないのか」

と私は思ったのですが、実は今いる父は亜李亜の本当の父ではありません

ここに一つミスリードが仕掛けられています

その後、亜李亜の本当の父こそが殺人鬼で、母と犬を殺した張本人であることが明かされます

それでは、今いる父は何者なのか?

この父は、国家に所属して殺人という現象をひたすら観察するという役目を与えられた人物でした

殺人研究

父の仕事は殺人を研究することです

日本全国に仕掛けられた監視カメラに録画された殺人の映像を分析し、その映像をスポンサーに見せています

なぜこんなことをしているかというと、

「国家が殺人を制御するため」

です

この小説で描かれている「殺人」に対する考え方が非常に興味深いので、少し掘り下げます

法治国家においては、合法的に殺人が行えるのは国家権力だけです

司法で裁かれて極刑になった人物を死刑にしたり、他国と戦争したり内乱を制圧するために武力を行使する行為がそれにあたります

「殺人」という力を国家だけのものにするためには、個人が引き起こす殺人をなくす必要があります

そのために殺人を研究するのです

また、父が所属している機関の目的の一つに

「殺人遺伝子を探すこと」

があります

「殺人遺伝子」とは、旧約聖書のカインとアベルの逸話の基づく考え方です

殺人が遺伝子によるものであれば、それを特定できれば、その人物が殺人を犯す前に排除することができます

アニメ「サイコパス」の「犯罪係数」と同じ考え方ですね

父の機関はそれを特定するために亜李亜の実の父を長年にわたって監視し続けていました

というのも、亜李亜の実の父は一般的な殺人者とは少し違う性質を持っていたからです

殺人者は大量殺人者、連続殺人者、などいくつかのタイプに分類されます

しかし、亜李亜の実の父は複数の性質を併せ持った特殊な殺人者だったのです

衝動的に殺人を犯すこともあれば、計画的に殺人を犯すこともあり、一度に殺す人間の数もまちまちでした

亜李亜の実の父の殺人を観察する父は、やがてある仮説にたどり着きました

それは何とも皮肉なもので、

「亜李亜の実の父は特殊な殺人者ではなく、実は普通の人間なのでは…?」

というものです

気分の変調で行動に一貫性が持てないことは誰にでもあります

私も

「よし、これから毎日運動するぞ!」

と意気込んで数日経つと、

「今日は忙しくて疲れちゃったからいいや…」

と、結局運動をしなくなってしまうことを何度繰り返したかわかりません

つまり、この小説では

「殺人遺伝子などは存在せず、普通の人間が何かのきっかけで殺人を犯す」

ということが示唆されているように私は感じました

私はこの意見に同意してまして、だから司法に置いて殺意の有無が重要視されたり、情状酌量の余地について吟味されたりするのかな、と考えました

人間は感情の生き物で、自分を制御できなくなることは誰にでもあります

「人間には誰でも殺人を犯す可能性がある」

このことを肝に銘じておけば、自分が感情に振り回されそうになったときも、道を踏み外さないように自分を律することができるのではないかと思います

まとめ

今日は小説「QJKJQ」を紹介しました

伏線回収もののミステリー作品としても楽しめますし、「殺人」という現象について深く考えさせられる作品でもあります

機会があれば読んでみてください

今日も最後まで読んでいただいて、ありがとうございました!

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