【全ページに散りばめられた伏線】小説「逆転美人」紹介

小説

こんにちは! パドルです

今日は最近読んだ小説の「逆転美人」を紹介します

藤﨑翔による小説で、本屋に平積みされているのを見て読んでみることにしました

本のあおりには

紙の本でしか味わえない大どんでん返し!

と書かれていたため、どんでん返し好きな私としては読まないわけにはいきません

この小説は美人が原因で苦労してきた佐藤香織という人物によって書かれた手記という設定になっています

香織はとある事件に巻き込まれたのですが、事件の被害者であるにも関わらずメディアや世間からバッシングを受けてしまいました

日常生活に支障が出かねなかったため、「逆転美人」という手記を発売することで悪いイメージを払拭しようとしたのです

「逆転美人」は、香織が生まれてから事件に巻き込まれるまでの半生をつづった本編と、本が売れたことによって加筆された追記によって構成されています

本編は読む人が読めば違和感を覚える部分はあるものの、全体的には美人がひたすら苦労する話です

しかし、追記によって本編中に仕込まれた仕掛けが明らかになります

この仕掛けは見事という他なく、作者の構成力にひたすら脱帽です

こんな人におすすめ

「逆転美人」はこんな人におすすめです

  • 美人は人生イージーモードだろと考えたことがある
  • 今までにない驚きを味わいたい
  • タイトルの意味が気になる

あらすじ

簡単にあらすじを紹介します

「逆転美人」は本編と追記の二部構成ですが、ここでは本編の内容のみに触れます

主人公は佐藤香織(仮名)

娘と息子を持つシングルマザーです

彼女は美人なのですが、美人であることでむしろ人生を損してきました

現に「逆転美人」を出版しようとしたのも、とある事件の被害者であるにも関わらず各種メディアの無責任な報道で世間から悪いイメージを持たれてしまったからです

香織には世間に広がっている、外見だけで人の印象を決めてしまう「ルッキズム」に一石を投じたいという想いもありました

そんな香織の手記は小学生時代から始まります

香織は当時から美人でした

それが原因で小学生時代に3回誘拐されかけています

また、クラスの一部の女の子たちから嫌がらせを受けていました

そして、クラスで親友だと思っていた女の子にも裏切られてしまいました

その女の子が片思いしていた男の子が実は香織のことが好きで、男の子に告白したところ香織が好きだからと断られてしまったことがきっかけです

要するに逆恨みです

その女の子以外に友達がいなかった香織は、クラスで完全に孤立します

先生に相談しても助けてくれませんでした

そんな小学校時代を過ごしたため、中学校は小学校とは違う学区に通うことにしました

しかし、そこでも香織は苦労することになります

しかも、もっとひどい状態になってしまいました

美人が原因で女子生徒からはいじめられ、男子が守ってくれると思いきや香織に告白して振られると守ってくれなくなったり、教師にブルマを盗まれたり、とある女子生徒に指を骨折させられたり…

高校に入っても状況は変わらず、男子生徒からは言い寄られ、女子生徒からはいじめられます

唯一親身になってくれた英語教師も単に香織の身体目当てでした

高校に居場所がなくなった香織は高校を中退します

香織の苦労はまだまだ終わりません

コンビニのバイト、1時間で辞めた工場、キャバクラと仕事を転々とします

その後コンビニのバイトで出会った男性と結婚して専業主婦となり、娘と息子が産まれますが、火事で夫を亡くしてしまいます

その数年後には自動車事故で父を亡くし、同乗していた娘が下半身不随となって車椅子生活になってしまいます

シングルマザーになった香織は、キャバクラ時代の太客であったKという男性の支えもあり、なんとか二人の子供を育てていきます

しかし香織はまたもや不幸な目に遭います

娘の勉強を見てくれていた教師に襲われそうになり、とっさにナイフで切りつけたところ、その教師が逃げて行方不明になったことで事件直後は香織に疑いがかかります

一週間ほどで警察から織が疑われることはなくなったのですが、その間にされた各種報道のせいで香織に対するイメージは最悪です

自分は被害者にもかかわらず世間からこんな悪意を向けられている

「私の半生を知った上で、本当に美人が得だと思いますか?」

と香織は世間に問いかけます

これが本編のあらすじです

ネタバレあり感想

ここからはネタバレありで感想を書いていきます

未読の方はご注意ください

全ページに散りばめられた伏線

「逆転美人」は文字通り、全ページに伏線が散りばめられています

その仕掛けは追記部分の後半で明かされるのですが、何が仕掛けられているかわかったときの私は、

「こんなに完璧に組み上げるなんて、いったい作者の構成力はどうなってるんだ…!?」

と感嘆しきりでした

また、種明かしの過程も工夫されていました

最初は見過ごされてもおかしくない小さな仕掛けを順番に解説していきます

「実は本編を書いているのは香織ではなく、その娘だった」

というところから始まり、本編のそこかしこに時代考証をすると違和感のある記述が散りばめられていたというのです

例えば、1996年にドラマ「踊る大捜査線」が放送されていたことになっていたり、香織が〇〇に似ていると例えられた芸能人がその年にはまだ芸能界デビューしていなかったり…

本当に細かいです

本の帯に

「大どんでん返し!」

と書かれて期待していた私は、

「まさか、これじゃないよな…」

と少し不安になりました

その不安は良い方向に裏切られます

最終的に明かされた仕掛けがものすごいものでした

本編の最後数行に少し違和感のある文章が登場します

その文章は香織が今までしてきた苦労のせいで肩が角ばってしまったという内容で、

「角ばった肩を右肩、左肩、右肩と交互に見ながら自分の人生を振り返れば、今後やらなければならないことが見えてくる」

という文章です

ちょっと意味がよくわからないですよね

しかし、これが全ての真実を明らかにする手がかりになるのでした

さっきの文章を翻訳すると

「本の見開きページ右上、左上の一文字を交互に順番に読んでいくと、真実が見える」

という内容になります

この規則に従ってページをめくりながら文字を拾って読んでいくと、

「この本に書かれていることは嘘ばかりです。本当は母ではなく娘の私が文章を書いていました。また、火事で亡くなった父、事故で亡くなった祖父、母を襲おうとして行方不明になった教師は、母とKの手によって殺されました。……」

というような文章が現れます

この仕掛けを実現するためには、一文一文どころか一文字一文字まで推敲を重ねなければなりません

構成力もさることながら、最後まで書き上げた作者の忍耐力も驚嘆に値します

しかも、この文章は本編だけでなく追記部分にも仕掛けられています

すごすぎますよね!!

まとめ

今日は小説「逆転美人」を紹介しました

香織の苦労話は少し読むのが辛くなる部分もあるのですが、その不快感に耐える価値は充分にあります

追記部分で明かされる真実と、その仕掛けに驚愕すること間違いありません

機会があれば読んでみてください

今日も最後まで読んでいただいて、ありがとうございました!

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