【登場人物のモノローグに張られた伏線】小説「神様の裏の顔」紹介

小説

こんにちは! パドルです

今日は最近読んだ小説の「神様の裏の顔」を紹介します

藤﨑翔の作品で、デビュー作でもあります

先日紹介した「逆転美人」と同じ作者さんです

「逆転美人」もとても面白い作品でしたが、この作品でも「逆転美人」と違った形の驚きを味わうことができます

舞台は坪井誠造という人物のお葬式です

喪主や参列者など七人の登場人物が故人について語ると、神様だと思われていた故人にとある疑惑が生まれて…

という話です

こんな人におすすめ

「神様の裏の顔」はこんな人におすすめです

  • 伏線回収ものが好き
  • テンポの良い作品が好き
  • 裏の顔がない人なんていないと思う

あらすじ

あらすじを簡単に紹介します

坪井誠造という人物が亡くなり、お葬式が開かれています

彼は生前教師として働いていました

引退後もNPO法人のボランティアとして教育に尽力していました

そんな彼は周囲から神様と言われるほどの人格者でした

どんな落ちこぼれの生徒にも手を差し伸べ、自分と教育方針が異なる同僚にも丁寧に接し、お金がない人に自分のアパートの部屋を格安で貸し出したり…

本当に聖人のような行いです

お葬式には参列者も多く、みんな坪井誠造の死を悼んでいました

この物語は、七人の登場人物の視点で語られます

坪井誠造の娘である晴美と友美

参列者で坪井誠造の教え子である斎木と鮎川

同僚だった根岸

お隣さんの香村

坪井誠造が経営するアパートに住んでいる寺島

彼らはそれぞれ坪井誠造に良いイメージを持っており、お葬式に参列しながら思い出を回想します

お葬式が終わって通夜ぶるまいが始まると、鮎川と寺島が同じテーブルになります

ふとしたきっかけで二人は会話を始めますが、その内容は、生前の坪井誠造のイメージとはかけ離れていました

「坪井誠造が部屋を盗聴していたかもしれない…」

という疑惑について話していたのです

というのも、二人はどちらも坪井誠造のアパートに住んでいたのですが、鮎川は一時期ストーカーから嫌がらせを受けていました

その内容が本人しか知りえないようなことだったのです

また、寺島にも盗聴に心あたりがありました

寺島は売れないお笑い芸人なのですが、自分の部屋で練習していたコントの内容を坪井誠造が知っていたのです

この疑惑について話しているうちについ声が大きくなってきた二人ですが、二人の話し声を聞いて坪井誠造の行動に違和感を持っていた登場人物たちがどんどん集まってきます

その中には

「坪井誠造が殺人を犯したかもしれない…」

という疑惑もありました

果たして、坪井誠造は神様だったのか、それとも裏の顔があったのでしょうか…?

ネタバレあり感想

ここからはネタバレありで感想を書いていきます

未読の方はご注意ください

各登場人物の裏の顔

坪井誠造に疑いを持ってしまった七人ですが、裏の顔がある人物も何人か混ざっていました

別れた家族にストーカーをしていたり、とある人物の自殺を隠蔽していたり、真犯人だったり…

どんな人にも裏の顔があるものだと思えばそれまでなのですが、それを踏まえて各人物の発言や考え方を振り返ってみると、本当の狙いが透けて見えて面白いです

また、これは裏の顔というよりは「もう一つの顔」と言ったほうが適切なのですが、坪井誠造の娘である晴美と友美のうち、友美は存在しません

友美は一人っ子で、友美は晴美の別人格です

坪井誠造が完璧な人格者であったために、娘も幼い頃から完璧であることを求められていました

しかし、その重圧に耐えられなくなってしまった晴美は、別人格で自由奔放な性格である友美を創り出します

ストレスがたまったときには体のコントロールを友美に任せ、晴美は閉じこもって回復します

この物語は七人の登場人物のモノローグによって話が展開されますが、実はお葬式の現場には六人しかいなかったことになります

これは文章を読ませて情景を想像させる、小説ならではの叙述トリックですね

友美が実は存在しないことは、真実が明かされる前にもそこかしこに伏線として表れていました

その中でも私が引っかかったのは

「座布団が六枚しか用意されていなかった」

という表現でした

最初は通夜ぶるまいでの二人の会話からスタートしましたが、人数が増えてきたので七人は小さな和室に移動して話すことになりました

そのときに座布団が用意されていたのですが、片づけるときに六枚しかなかったのです

私は

「あれ? なんで七人いるはずなのに六枚しかないんだろう…?」

と思いましたが、実は友美は現実には存在しない、というところまでは思い当たりませんでした

また、物語の冒頭には友美が存在すると思わせるようなミスリードも用意されています

晴美には顔が似ている従姉妹がいて、通夜の席では二人が並んで立っている場面がありました

その場面は参列者の視点から描かれていて、参列者は

「晴美さんの隣に立っているのは妹さんかな?」

と推測します

この推測が否定されるのは晴美が二重人格だと判明する物語終盤です

それまでは晴美の隣には友美が立っていたと読者は錯覚してしまいます

これも小説ならではの叙述トリックです

コミカルなセリフ回し

この小説は作者が元お笑い芸人ということもあり、ところどころコミカルなセリフ回しが多いです

それが物語のテンポを良くしています

物語の途中ですれ違いコントのような事態が生じる場面では、思わず頭の中で

「アンジャッシュかよ!」

とツッコんでしまいました

また、この物語中ではお笑い芸人が探偵役を務めます

登場人物の一人である寺島はお笑い芸人で、自分のネタに取り入れるためにお葬式を勉強するために参列しました

寺島は世間知らずで、彼のモノローグは天然ボケが繰り広げられていて読んでいてとても面白いです

しかし彼は頭が悪いわけではありません

坪井誠造の悪事かと疑われた出来事に一つ一つ反証し、坪井誠造の無実を証明したのは彼でした

もっとも、彼が真犯人にたどり着くことはなかったのですが…

まとめ

今日は小説「神様の裏の顔」を紹介しました

セリフ回しがコミカルで、テンポ良く読める作品です

伏線もしっかりと張られていて、明かされる真実にはしっかり驚かされます

また、

「何事にもやろうと思えば理屈はつけられるんだなー」

と思わせる作品でもありました

機会があれば読んでみてください

今日も最後まで読んでいただいて、ありがとうございました!

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