【最後の1行に込められた伏線回収】小説「噂」感想

小説

こんにちは! パドルです

今日は最近読んだ小説「」を紹介します

ある広告代理店が商品を売るために流した都市伝説が実際に事件として発生してしまう、という物語です

この小説は最後の1行で衝撃の事実が明らかになるという構成で、実際に読んでみた私も

「え…?」

となりました

困惑したまま読み終え、少し気になった部分をいくつか読み返してみると、最後の1行に向けてしっかりと伏線が張られていることに気づきます

そんな驚きを体験したい方におすすめの小説です

こんな人におすすめ

私が「噂」をおすすめしたいのはこのような方たちです

  • 伏線回収ものが好き
  • サスペンス系が好き
  • 噂好き

最後の「噂好き」というのは、この小説の怖い部分から思いつきました

私たちはあることないことを噂として聞いたり、話したりすることがありますが、あまり適当なことを言っていると後でしっぺ返しがあるかもしれません…

この小説では噂が実際の事件に発展してしまう様が描かれています

簡単に噂を信じたり、噂程度の情報を広めないように気を付けないといけません

あらすじ

ここからは「噂」のあらすじを紹介します

舞台は西暦2000年の東京

物語は女子高生同士の噂話から始まります

その内容は、レインコートを着た男に若い女性が殺されてしまうというものです

男は通称レインマンと呼ばれています

しかも、その男は女性の足を切断してしまいます

とても残忍ですが、ミリエル社の香水をつけているとその男に襲われないらしいのです

物語の主人公は刑事の小暮

彼は高校生の娘である菜摘と一緒に暮らしています

あるとき、公園で女子高校生の遺体が発見されました

その遺体は足を切断されていました

小暮はコンビを組んだ名島とともに、この事件の犯人を追います

事件を調べるなかで、女子高校生の噂話が事件の状況と同じであることを突き止めます

また、その噂話はコムサイトという会社がミリエル社の香水を売るために意図的に流したものだそうです

果たして、噂と事件にはどのような関わりがあるのでしょうか?

以上があらすじです

魅力紹介

ここからは「噂」の魅力を紹介します

最後の一行

「噂」の最大の魅力は、物語最後の一行の衝撃にあります

この一行があることで、物語中に張られた伏線が回収されるとともに、この小説独特の怖さが表現されています

真実を知った後に物語中の描写を振り返ってみると、登場人物の何気ない会話や表現が実はとても重要なものであったことに気づきます

しかも、最後の一行が読者にしっかりと衝撃を与えるように、物語中のいくつもの場面が工夫されています

伏線の張り方がとても見事です

また、最後の一行の真実を踏まえると、人の怖さというのを改めて感じさせられます

読了した瞬間に困惑し、伏線の見事さに気づいて感心するとともに、うっすらと恐怖も感じる…

このような体験は初めてでした

噂話の怖さ

「噂」は物語としての面白さに加えて、噂話の怖さも教えてくれます

レインマンの噂は、コムサイト社が香水を売るために流したものです

また、その噂とともに他社製品のネガティブマーケティングも行っていました

作者が元広告代理店社員だったこともあり、商品のプロモーションのやり方もリアルです

時代が20年以上前なので今では違法になりそうな方法も存在しますが、こうやって口コミでものを売っていくんだなと感心させられます

逆に、根拠のないことでも多くの人がその商品の価値を信じてしまえば売れてしまうことの怖さも感じました

今ではSNSを通じて、口コミよりも格段に速く情報が伝わってきます

しかしその情報の真偽を見極められるようにならないと、無駄なことにお金を使ってしまったり、意味のないものを信じてしまう危険性があります

このようなことを気づかせてくれる物語でもありました

ネタバレあり感想

ここからはネタバレありで感想を書いていきます

未読の方はご注意ください

まさか、あの人が…

「噂」の最後の1行で明らかになるのは、小暮の娘である菜摘が、コムサイト社の社長である杖村を殺した、というものでした

しかも、その前の会話の様子では、自分が手を下したことをなんとも思っていない様子でした

菜摘の親友がレインマンの手にかかって亡くなってしまっているので、動機は充分納得はできます

しかし、実際の犯人は杖村ではありません

菜摘はそのことにも気づきましたが、それによって自分の犯行を後悔することもありませんでした

とんでもないサイコパスです

菜摘が杖村に手を下したことを踏まえると、物語途中のいくつかの描写の意味がよりわかりやすくなります

例えば、菜摘が小暮にレインマンの被害者がどのような状態だったか、どのような凶器が使われたかを詳細に聞いたのにも理由がありました

後でレインマンの犯行に見せかけて杖村を葬るつもりだったのです…

また、菜摘は親友の死依頼定期的に友人宅に泊まっていたのですが、小暮から外泊を止めるように言われます

「もう泊まる約束をしたから、それを最後にする」

と菜摘は答えますが、それは杖村を鬼籍に入れるためでした

また、杖村が襲われるシーンでは

くすくすくす

とまるで少女のような笑い声が聞こえる描写があります

最初はこの描写の意味がわかりませんでしたが、菜摘がその場にいたのなら納得できます

このように、作中のいたるところに張り巡らされた伏線を、最後の

「きもさぶ」

というセリフのみで回収してしまうのですから、見事としか言いようがありません

犯人のキャラクター

「噂」の犯人のキャラクターは特徴的です

この作品に犠牲者は4人出てきますが、杖村以外はすべてレインマンによる犯行です

犯行理由は、

「女性の足が好きだから」

というもの

これこそまさに「ジョジョの奇妙な冒険」第4部に登場する吉良吉影とほぼ同じ思想です

吉良吉影の場合は女性の手が好きで、それ以外の部分は処分していました

「噂」の犯人も、被害者の足は切断して持ち帰り、その他の部分は放置していました

また、犯人は遺体を人の目に触れる場所にわざと置くなど、不可解な行動が目立つのですが、

その理由は

「被害者ことをよく知りたいから」

でした

被害者が発見され、警察の調べやマスコミの取材などで身元やどんな人物かわかることで、足をより深く愛せるそうです

また、足に塗るペディキュアを選ぶ際にも人となりを参考にしていました

この狂気とも言える愛が、犯人のキャラクターを引き立たせています

まとめ

今日は小説「」を紹介しました

最後の1行には誰もが衝撃を感じるはずです

そこにいたるまでの物語も面白く、いったい誰が犯人なのか予想しながらページをめくっていると、あっという間に読み進めてしまいます

機会があればご一読ください

今日も最後まで読んでいただいて、ありがとうございました!

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