こんにちは!
今日は最近読んだ小説「七回死んだ男」を紹介します
西澤保彦による作品で、タイムリープものという設定に惹かれて読んでみることにしました
主人公の久太郎(ひさたろう)は、とある一日を繰り返してしまう体質の持ち主です
繰り返す一日は自分で選ぶことはできません
気が付いたらループに入り、そのループは必ず九回繰り返されます
この現象は月に数回発生し、繰り返される期間はその日の0時から24時までです
久太郎はこの体質を利用して、祖父である渕上零治郎が殺されるのを必死で回避しようとします
こんな人におすすめ
「七回死んだ男」はこんな人におすすめです
- タイムリープものが好き
- 主人公が淡々としている作品が好き
- 騙されたい
あらすじ
あらすじを簡単に紹介します
主人公は高校一年生の久太郎(ひさたろう)
名前の字面から、よくキュータローと呼ばれています
家族や親戚でさえも、彼のことをキュータローと呼びます
久太郎は特異体質の持ち主で、月に数回ほど、同じ一日を繰り返してしまうことがあります
いわゆる、タイムリープです
繰り返す回数は決まって九回で、八回目までは何をやってもリセットされ、九回目に起きたことが世界の事実として固定されます
ループする日を久太郎が選ぶことはできません
この特異体質が原因で、久太郎はすでに体感で30年ほど生きており、周囲から大人びていると見られることがよくあります
また、八回目のループまではすべてがリセットされることが影響し、大胆に挑戦することがありながらも物事を潔くあきらめる性格の主人公です
久太郎はエッジアップグループという大企業の会長である、渕上零治郎の孫です
エッジアップグループは零次郎の強運で大きくなった会社で、零治郎も高齢となり、後継者を選ぶことを考えます
零治郎には娘が三人いますが、会社を手伝っているのは次女のみでした
その次女には子供がいないため、親戚や秘書も含めた人物の中から後継者を選ぶことになりました
元旦に関係者が零治郎の屋敷に集められ、零次郎は今回書く遺言状で後継者を最終決定すると告げます
長女と三女は、自分の子供たちを後継者にしようと躍起になり、あらゆる手練手管を巡らせます
零治郎はどのように後継者を選定するか明言せず、その日はお開きとなります
翌日、久太郎は祖父に付き合わされ、酒をしこたま飲まされます
ぐでんぐでんになっていた久太郎は家に帰る車に乗ったことは覚えていたのですが、気づいたら朝になっていました
しかも、起きたのは自分の家ではなく祖父の屋敷です
久太郎は自分がループに入ったことを直感します
階段を降りた久太郎は祖父とお手伝いさん、叔母が昨日と同じ会話をしているのを耳にし、ループしていることを確信します
つまり、このままの流れだと祖父の酒盛りに付き合わなければなりません
それを回避するために離れに行ってやり過ごすと、やはり祖父は酒を持って久太郎がいた部屋に入っていきました
そのまましばらく離れで過ごしていると、久太郎は兄と従姉の逢瀬を目撃します
その後、その二人が祖父の元に行くことも目撃します
二人が祖父の元から出て行ってしばらくし、久太郎も本館に戻ると、祖父がいた部屋から叔母の悲鳴が聞こえてきます
なんと祖父が死体で発見されたのです
久太郎は兄と従姉の犯行だと確信し、次のループで二人が祖父の部屋に近づかないよう画策します
それは上手くいったのですが、今度は違う人物が祖父に会いに行くのを目撃してしまいます
不吉な予感を覚えた久太郎でしたが、果たしてその予感は的中し、祖父はまた亡くなってしまいます
果たして、久太郎は祖父が死なない歴史にたどり着くことができるのでしょうか?
ネタバレあり感想
ここからはネタバレありで感想を書いていきます
小説未読の方はご注意ください
タイムリープを利用した伏線
「七回死んだ男」はタイムリープもののミステリーなのですが、タイムリープという設定を活かして読者を騙してくるところが一番の魅力だと思います
タイムリープものの暗黙の前提として、
「ループ中はループを認識している人物以外は同じ行動を繰り返す」
というのがあります
しかし、この物語ではループの度に違う人物によって祖父が殺害されたように描かれています
久太郎は前のループで祖父を殺害したと思われる人物を、次のループで何とか祖父の部屋に近づけないようにしますが、そのたびに違う人物が祖父の部屋に足を運ぶ結果となってしまいます
犯人の足止めはできているはずなのに、なぜ毎回祖父が殺されてしまうのか?
大きな謎が提示されます
この謎に対する答えが明かされたときに、私は自分が思い込みに囚われていたことを強く感じました
実は、祖父は誰にも殺されていなかったのです
毎回一人で酒を飲み過ぎた結果亡くなり、その場に居合わせた人物が誰かに殺されたように見せかけていたのです
つまり、祖父が亡くなるのは確定事項で、たまたま近くにいた人物がループの度に変わっていたのでした
タネがわかれば単純なのですが、読者の思い込みを利用した見事なミスリードだと思います
もう一つの思い込み
「七回死んだ男」で私が個人的に驚いたことのもう一つは、
「実はループしていたのは1月2日ではなく1月3日だった」
という事実です
この事実を示されたとき、私の頭の中は「?」でいっぱいになりました
言われてみると、たしかに違和感はありました
1月2日の最初のループで久太郎が言ったことを覚えていると思われる人物がいたからです
その人物とは、エッジアップグループ秘書の友理
久太郎は1月2日の最初のループで彼女にプロポーズめいたことを言うのですが、次のループに移っても、友理はそのことを覚えているような発言をしていたのです
私は
「もしかしたら友理もループしているのでは…?」
と思っていたのですが、実際にはループが一日分ずれていたのでした
しかしそうすると別の疑問が浮かびます
「なぜ久太郎はループが一日ずれていることに気が付かなかったのか」
ということです
久太郎はループが一日ずれていることに、ループを抜けた1月4日に友理と会話することによって気づきました
本来であれば、久太郎がループを抜けたと思った次の日もループが続けば、ループの日が一日後ろになっていることに気づくはずです
ループする回数は九回と決まっているためです
この疑問にも納得のいく説明が用意されていました
実は、久太郎は一回分のループを認識していなかったです
なぜなら、久太郎自身が死んでいたから
久太郎階段に落ちていたイヤリングに躓いて転がり落ち、亡くなった、というループがあったのです
これも明らかになってみれば単純なのですが、言われるまで気づきませんでした
思い込みを利用した素晴らしいトリックです
まとめ
今日は小説「七回死んだ男」を紹介しました
タイムリープという設定をフル活用して読者を騙してくる、とても面白い小説です
単純ながらもそれに気づかない、見事な仕掛けが施されています
ミステリー好き、タイムリープもの好きの方に是非読んでいただきたいです
今日も最後まで読んでいただいて、ありがとうございました!
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