【親切な注釈に張られた伏線】小説「星降り山荘の殺人」紹介

小説

こんにちは!

今日は最近読んだ小説「星降り山荘の殺人」を紹介します

倉知淳による作品で、刊行されたのは1996年です

自然豊かな山荘で殺人事件が発生するクローズドサークルものです

この小説には特徴的な要素があります

各章の冒頭に数行で、その章で発生する出来事と読者が注意すべきポイントが書かれているのです

例えば、

「まず本編の主人公が登場する」

など

さらには主人公が犯人でないことも冒頭に明示されます

また、重要な伏線が張られていることを明らかにする注意書きもあります

この各章の冒頭に書かれていることが、物語終盤で読者を驚きの展開へと誘います

こんな人におすすめ

「星降り山荘の殺人」はこんな人におすすめです

  • クローズドサークルものが好き
  • 推理の論理展開をしっかり説明してくれる作品が好き
  • 今までにない方法で騙されたい

あらすじ

あらすじを簡単に紹介します

主人公はとある企業に勤める杉下和夫(すぎしたかずお)

彼は同僚をかばうために上司を殴ってしまい、部署を異動することになりました

和夫の会社は最近新しく芸能部門を立ち上げており所属タレントにマネージャーをつけるというのです

その役目が和夫に回ってきました

和夫がマネジメントするのは、星園詩郎(ほしぞのしろう)

肩書はスターウォッチャーです

スターウォッチャーとは聞きなじみがない職業ですが、空を見ながら天体や星座のことをロマンチックに語るという仕事です

星園は容姿端麗ということもあり、世間の女性たちからかなりの支持を集めています

ちなみに星園が登場する章の冒頭には、

「探偵役が登場する」

「探偵役は犯人ではない」

というような説明が書かれています

星園と和夫は仕事で埼玉県秩父市の山荘に行くことになりました

その山荘はもともとキャンプ愛好者用のコテージがいくつか集まっている場所だったのですが、経営難になりオーナーが変わりました

新オーナーは、その山荘をUFOが訪れて星がきれいな山荘というテーマで売り出したいらしく、星園をイメージキャラクターにするため招待したのです

同じタイミングでUFO研究家も招待されていました

招待されたのは全部で七人

オーナーと従業員を合わせると九人です

一日目の夜にみんなで食事を摂ったあと、和夫は星園のコテージに向かいます

途中、オーナーのコテージ前を通ったときに、オーナーと誰かが痴話喧嘩しているような声を聴いてしまいます

そのときは特に気にしていなかった和夫でしたが、この事実が後々和夫を窮地に立たせます

翌日、朝食の時間が過ぎてもオーナーが現れず、従業員が確認しに行くと、オーナーが首を絞められて殺害されているのを発見します

山荘には電波が届いておらず、従業員は車でふもとまで行って警察を呼ぼうとしますが、途中の道が雪で塞がれていました

つまり、犯人とともに山荘に閉じ込められる事態となってしまったのです

事件の謎を解こうと、星園は和夫と一緒に調査を開始します

果たして、オーナーを殺害した犯人は誰なのでしょうか?

ネタバレあり感想

ここからはネタバレありで感想を書いていきます

未読の方はご注意ください

探偵役

この小説の注釈はとても親切です

各章でどんなことが起こって、読者がどんなことに注目すればよいかが章の冒頭数行を読めばすぐわかります

しかし、親切なだけの注釈ではありません

注釈がある本当の目的は、読者を騙すことにあります

おかげさまで、私もすっかり騙されてしまいました

物語最初の注釈で、この章では主人公が登場し、主人公は犯人ではないことが示されます

しかし物語終盤、和夫が犯人として星園に名指しされるシーンがあります

そこで一旦頭はパニックになります

「まさか和夫が犯人なのか…?」

と疑った直後、とある人物が

「わかりました。星園さん、あなたが犯人だったんですね」

と発言します

このセリフを受け、私の頭の混乱は頂点に達します

「え? 探偵役って星園のことじゃないの??」

と、頭には疑問符でいっぱいになります

私が星園のことを探偵役だと思っていたのも、星園が登場する章に

「ここで探偵役が登場する。探偵役は犯人ではありえない」

と書かれていたからです

しかし、星園こそが真犯人でした

そこで星園が登場した章を振り返ってみると、実は星園のことを犯人だと指摘した人物も登場していたのです

和夫が星園に初めて会う直前、その人物とぶつかってしまっていたのでした

その章では名前は書かれていませんでしたが、和夫が山荘でその人物と再会したときに、

「あのときぶつかった人だ」

と思い出します

注釈に嘘はなかったのです

また、私が星園を探偵役だと勘違いしていた理由のひとつに、星園が積極的に事件の調査をしていたことがあります

各章の注釈でも、たびたび星園が推論を展開し、その推論が正しいということが書かれていました

星園の行動と注釈の合わせ技で、すっかり星園が探偵役だと思い込んでしまいました

物語内と物語外、両方から思い込みを誘導されていたのです

「読者を騙すのはこんなやり方もあるのか!」

と素直に感心してしまいました

まとめ

今日は小説「星降り山荘の殺人」を紹介しました

親切な注釈に仕掛けられた伏線に、騙されること間違いなしです

また、推理のロジックがとても丁寧に解説されるので、真相が明らかになったときには誰もが納得できると思います

機会があれば読んでみてください

今日も最後まで読んでいただいて、ありがとうございました!

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