【全ての表現が伏線】小説「向日葵の咲かない夏」紹介

小説

こんにちは! パドルです

今回は最近読んだ小説の「向日葵の咲かない夏」を紹介します

道夫秀介による作品です

主人公は小学4年生のミチオ

ミチオが近所で発生したクラスメートの死の謎や、動物の変死体の謎を追っていく物語です

しかし、この小説、ただの探偵ものではありません

時々ファンタジーとも思える現象がいくつか起こるのですが、最終的には全てに納得のいく説明が用意されています

こんな人におすすめ

「向日葵の咲かない夏」はこんな人におすすめです

  • 伏線回収ものが好き
  • 人間の狂気を扱った作品に興味がある
  • 現実的な物語が好き

あらすじ

「向日葵の咲かない夏」のあらすじを紹介します

小学4年生のミチオは、家族4人暮らし

父、母、ミチオ、三歳の妹のミカです

母はとある事件をきっかけに精神が崩壊してしまい、ミカにはとても甘く、ミチオにはとても厳しく接します

そんなミチオですが、ミカとは仲良く接しています

彼は夏休み前の終業式に担任の岩村先生にあることを頼まれます

クラスに馴染めずに孤立していたS君の家に届け物をしてほしいというのです

引き受けたミチオがS君の家に行くと、なんとS君が首を吊っていました

ミチオはすぐに学校に戻って岩村先生にこのことを伝え、先生は警察に連絡してすぐS君の家に向かいます

学校に戻ってきた先生と警察は奇妙なことを口にします

S君の死体が見つからなったと言うのです

ミチオはそんなはずないと主張しますが、誰もミチオの言うことを信じてくれません

S君の死体はありませんでしたが、首を吊ったり、箪笥が引きずられていたり、S君の排泄物の痕跡はありました

警察は事件性があるとして捜査を始めました

次の日、ミチオが自宅の部屋に戻ると、なんとS君がそこにいました

しかし、S君は人間の姿ではなく蜘蛛の姿になっていました

蜘蛛の姿のS君はミチオに言います

「僕は本当は自殺ではなく殺されてしまったんだ」

「犯人を捕まえるのを協力してほしい」

ミチオは独自にS君の死の謎を追い始めます

果たしてS君の死の真相とは…?

ネタバレあり感想

ここからはネタバレありで感想を書いていきます

「向日葵の咲かない夏」未読の方はご注意ください

全てが伏線

「向日葵の咲かない夏」には、ファンタジー要素と思われる描写がたくさん出てきます

ミチオが窓の外を見るとS君が宙を舞っていたり、S君が死んだと思ったら蜘蛛に生まれ変わったり…

私はファンタジー要素はファンタジー小説の中だけで楽しみたいと思っているタイプなので、最初はこれらの描写に少し不満がありました

ミステリー小説にファンタジー要素を持ち込むと、下手したらトリックにも魔法を使ったりと何でもありになってしまうのではと不安になるからです

しかし、そんな心配は完全に杞憂に終わりました

すべてのファンタジー表現には納得できる理由があったのです

また、ファンタジー要素に限らず「向日葵の咲かない夏」にはそこかしこに引っかかる描写があります

私が一番気になったのは、ミチオの妹のミカが三歳とは思えないほど利発なことです

三歳にしては言葉遣いが丁寧で知識も豊富です

さらに、ミチオが岩村先生を犯人だと疑って尾行したときの描写も不思議でした

岩村先生にミチオがミカと一緒にいる姿を目撃されたはずなのに、その数時間後にミチオが先生の部屋に忍び込んだときに、先生はミカに気づきませんでした

ミカは部屋の前にいたので、必ず先生に見られていたはずなのにです

これらの違和感は、終盤ですべて解消されます

S君が蜘蛛の姿に生まれ変わったことや、ミカの存在などはすべてミチオの妄想の産物だったのです

ミチオは精神を病んだ母親から虐待を受けています

そのせいで精神を病んでしまい、蜘蛛をS君と見立て、S君が話していると思い込もうとしたのです

また、ミカも人間ではなく、トカゲです

本物のミカは、産まれてくることができませんでした

ミチオの妄想の中で会話をしているため、三歳にしては大人びていましたし、トカゲなので岩村先生に気づかれることもありませんでした

母親は母親で人形のことをミカだと思い込んでおり、父親は二人の状況を受け入れてしまっています

読者にしてみれば、ミカが人間として存在しているとしか思えません

この思い込みをひっくり返され、ミカが存在していないという事実を突きつけられたときの私の衝撃はすさまじかったです

まとめ

今日は小説「向日葵の咲かない夏」を紹介しました

ファンタジーよりのミステリーかと思いきや、最後にしっかりと現実的に納得できる説明を用意してくれています

純粋にミステリー好きの方におすすめできる作品です

機会があれば読んでみてください

今日も最後まで読んでいただいて、ありがとうございました!

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