こんにちは! パドルです
今日は東野圭吾の小説「容疑者Xの献身」を紹介します
最近の集計だと約299万3千部も売れているらしく、大ベストセラーの作品です
私が一番好きな小説でもあり、最も泣けるミステリー小説だと思っています
「容疑者Xの献身」は映画化もされており、犯人役を堤真一さんが演じられています
彼の演技力も相まって映画も素晴らしい作品になっています
私は作品としては小説が好きですが、映画のほうが泣けます
つい先日も久しぶりに観て、とあるシーンで涙が止まらなくなりました
こんな人におすすめ
「容疑者Xの献身」はこんな人におすすめです
- ミステリーが好き
- 純愛を描いた物語が好き
- 友情を描いた物語が好き
最後のポイントである「友情を描いた物語」というのは、映画ではかなり薄まっています
この要素も楽しみたい場合は小説をお読みください
あらすじ
小説と映画で多少設定が異なりますが、ここでは小説のあらすじを書きます
もしかすると映画の設定と混同してしまう部分もあるかもしれませんが、ご容赦ください
弁当屋で働く花岡靖子は、中学生の娘である美里と二人暮らし
元夫である富樫慎二とは離れて暮らしています
富樫は仕事を失ってから人が変わり、靖子や美里の暴力を振るうようになったため、離婚して逃げてきたのでした
しばらくは平穏な日々が続いていましたが、あるとき富樫が弁当屋に尋ねてきます
その後靖子たちが住むアパートにも押しかけられ、靖子に金を渡すよう仕向けた挙句、
「お前らは俺から逃げられないんだよ」
と脅されます
富樫が帰ろうと靴を履いているところを、耐えられなくなった美里が鈍器で殴ってしまいます
その行動に切れた富樫は、美里を殴り始めます
殴られている美里を助けるために靖子は炬燵の電気コードを使って富樫の首を絞めます
美里も富樫を押さえつけるのに協力し、富樫を殺してしまいます
靖子は警察に自首しようと考えますが、そのときインターホンが鳴ります
隣に住む数学を教える高校教師である石神哲也が訪ねてきたのです
石神は物音で全てを察したらしく、靖子は石神を部屋に招き入れます
部屋をひととおり調べた石神は花岡親子に犯罪の隠蔽に協力することを申し出、
「大丈夫です 私の論理的思考に任せてください」
と言います
後日、旧江戸川の河川敷で男性の遺体が発見されます
裸の状態で顔がつぶされ、指紋は焼かれていました
近くに燃え残った服と被害者が乗ってきたと思われる自転車が放置されていたため、すぐに死体の身元が富樫慎二であると特定されます
そして容疑者に花岡靖子が浮上し、警察は靖子のアリバイを崩そうと調べ始めます
しかし、いくら調べても決定打が見つかりません
そこには石神によって想像を絶するトリックが仕掛けられていました
完璧に思われた石神のトリックですが、ある人物によって解き明かされます
その人物とは、湯川学
帝都大学物理学部の准教授で、通称「ガリレオ先生」
彼は警視庁捜査一課の草薙と大学時代の同期で、その関係で数々の事件を解決に導いてきました
基本的に湯川は現象にしか興味がないため、今回の事件には最初興味を示しませんでした
しかし花岡靖子の周囲に石神がいると知ると、自分から事件を調べ始めます
石神も湯川と同期で、数学を専攻していました
湯川は石神のことを真の天才と言うほど評価しており、湯川の数少ない友人でもあります
そんな友人が犯してしまった罪を知り、湯川はとても苦悩します
果たして、石神はどんな手段で警察の目を欺いたのでしょうか…?
ネタバレあり感想
ここからはネタバレありで感想を書いていきます
「容疑者Xの献身」未読、もしくは未視聴の方はご注意ください
ちなみにネタバレされても泣けますが、トリックが明らかになったときの衝撃はネタバレされると一生味わえません
単純なのに誰も気づかないトリックと、究極の深愛
トリック
この作品の素晴らしさは、トリックが単純なのにだれも気づかないことにあると思います
河川敷にあった死体は富樫慎二のものではなく、全くの別人のものでした
その死体は富樫が殺された翌日に石神が用意したものです
だから警察がいくら調べても花岡靖子のアリバイを崩すことはできなかったのです
警察が尋ねるのは富樫が死んだ翌日のアリバイだったため、対策はしっかりできていました
また、そのアリバイも石神の手によってわざと曖昧に構成されていました
崩せそうで崩せないアリバイ崩しに警察は執着し、河川敷の死体が富樫のものでないことを疑う隙を与えませんでした
見事としか言いようがありません
そしてこのトリックを用意した石神の行動力です
石神がどうやってもう一つの死体を用意したかと言うと、
「全く関係のない人物を自ら殺害する」
ことによってでした
ここにも石神の覚悟が表れています
石神は最初から追い詰められたときには自分が出頭することを考えていました
しかし、身代わりになるだけではいつか警察の追及に耐えられなくなってしまうかもしれません
ですが、実際に人を殺してしまえばどうどうと自分が殺したと主張し続けることができます
深愛
なぜ石神が自ら殺人を犯してまで花岡親子を守ろうとしたのか
それは
「花岡靖子を愛していたから」
です
しかし二人の間に男女の関係はありません
ただの隣人です
靖子には最後まで石神が自分に対してここまでしてくれた理由がわかりませんでした
実は、石神は花岡親子に命を救われていたのです
人生への絶望から自殺しようと考え、準備も整ったまさにそのとき、部屋のインターホンが鳴りました
花岡親子が引越の挨拶に来たのです
それ以降、隣の部屋から親子の楽しそうな会話が聞こえてくる度、石神は救われていました
毎日靖子が働いている弁当屋に通うようにもなりますが、関係はそれ以上進展しません
普通の人間であればどうアプローチしようかなどと考えそうなものですが、石神はそれをしません
関係の進展は望まずただただ愛し続け、愛する人がピンチになったら自分がどんなに汚れようとも助けようとする
これこそ究極の深愛だと思います
最後の最後まで石神は花岡親子の幸せを願っていましたし、靖子に良い人がいそうだとわかるとその人と幸せになることを願って、自らをストーカーの立場に貶めて警察の目を欺こうとしました
こんなに無償で人を愛せる人間は現実世界に存在しないと思います
私が泣いたシーン
私の涙が止まらなくなったシーンでも石神の純粋な愛が表現されています
石神が拘置所から輸送されるタイミングで湯川から真実を告げられた靖子が現れ、
「私も石神さんと一緒に罪を償います」
と頭を地面にこすりつけます
その様子を見た石神は
「どうして…?」
とつぶやき、魂の底から声を上げながら号泣します
石神はこのような事態になることを全く予想できていませんでした
靖子は自分のプラン通りに幸せになるということしか想定していなかったのです
靖子の行動に戸惑っている石神の様子から、全く見返りを求めずに深く靖子を愛していたことを再確認できます
私はこのシーンが切なすぎて、先日久しぶりに映画を観て号泣してしまいました
それぞれの友情
「容疑者Xの献身」は友情を描いた物語でもあります
湯川と石神の友情は映画でも描かれていますが、湯川と草薙の友情は小説でのみ描かれています
映画はドラマシリーズの続きなのですが、ドラマでは草薙のポジションが内海という女性刑事に変わっています
その影響で映画でも湯川と積極的に関わるのは内海の役割になっています
しかし、それが原因で劇中のとあるセリフがかなり軽い感じに聞こえてしまいます
湯川が石神の犯行に気づき、もう後戻りできない状態だと知って苦悩しているときに、草薙(映画では内海)が湯川に真実を教えてほしいと頼みます
そこで湯川が
「刑事としてではなく、友人として聞いてくれるか」
と問います
このセリフ、大学の同期で長い付き合いである草薙に対してであれば重みがあるのですが、映画では微妙です
なぜなら湯川と内海はドラマシリーズで初めて出会っており、そこまで関係が深いとは思えないからです
長年積み上げてきた関係がある草薙であるからこそ、苦しみながらも湯川は立場を抜きにして話を聞いてほしいと頼んだのだと思います
そこには湯川が大学時代に唯一話が合った石神との関係も大切にしたいという想いも表れています
自分が認め、友人だと思った人物が殺人を犯してしまったことを自分しか知らない状態というのは、想像しただけで心が締め付けられます
もう一人の友人は犯罪を暴く立場の人間であり、草薙の正義を尊重したいという気持ちもあります
この湯川の苦悩がリアルに伝わってくるのは、小説だけです
まとめ
今日は「容疑者Xの献身」を紹介しました
ミステリーとしても面白いですし、愛情や友情についても深く考えさせられる物語です
小説、映画どちらも素晴らしい作品なので、片方しか触れたことのない方はもう一方を味わってみてください
今日も最後まで読んでいただいてありがとうございました!
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