【少しオカルト要素のあるミステリー】小説「タイムカプセル」紹介

小説

こんにちは!

今日は最近読んだ小説「タイムカプセル」を紹介します

石原綾香という主人公が、十年前の中学生時代に埋めたタイムカプセルに関わる、隠された謎を追っていくストーリーです

折原一による作品で、書店で平積みされていたのが目に留まって買うことにしました

本の帯には

「丁寧に張り巡らされた伏線」

と書かれていて、さらに気になる袋綴じもあり、読む前の期待感が高まります

こんな人におすすめ

「タイムカプセル」はこんな人におすすめです

  • ミステリーにオカルト要素があっても楽しめる
  • 細かいことが気にならない
  • 伏線回収ものが好き

あらすじ

「タイムカプセル」は、十年前の出来事と現代の出来事が交互に描かれる構成となっています

冒頭は栗橋北中学校という学校の卒業式のシーンから始まります

卒業生が五十音順に呼ばれて卒業証書の授与が終わった直後、とある人物が立ち上がります

周囲はどよめきますが、その人物は気にせず壇上に進むと、校長が名前を読み上げます

「不破勇(ふわいさむ)」

するとその人物は

「お前は誰なんだ!!」

と怒りだし、校長は頭を下げます

一悶着はありましたが、無事卒業証書が授与されると、その人物は満足そうにしていました

それから十年後

栗橋北中学校を十年前に卒業した石原綾香は、フリーのカメラマンになっていました

出版社に持ち込む企画を考えていたところ、中学校の同級生から連絡があり、久しぶりに会うことになりました

その同級生の名前は、三輪美和(みわみわ)

女性ですが、苗字と下の名前が同じこと、当時は男勝りだったことも手伝って、周囲からは「ヨシカズ」と呼ばれていました

綾香が話しを聴いてみると、美和の下に奇妙な手紙が届いたというのです

「郵便でーす」

という掛け声とともに投函されていたその手紙には差出人の名前がありませんでした

しかも、美和はマンションに住んでいるにも関わらず、1階の郵便受けではなく部屋に直接投函されたのです

手紙には、十年前に埋めたタイムカプセルを開ける日が近づいてきたこと、手紙を届けるにあたってちょっとしたサプライズを用意していたことが書かれていました

また、タイムカプセルを開けるイベントの詳細の隣に出欠欄が書いてあったのですが、すでに「出席」に〇が付けられていました

美和はもしかしたら綾香が仕掛け人なのではと考えて綾香と会ったのですが、綾香には全く心当たりがありません

綾香はこの奇妙な手紙に興味を持ち、自分で調べてみることにしました

タイムカプセルを埋める企画にはクラスの8人が有志で参加していたのですが、埋める日の当日に参加したのは5人だけでした

そのうちの1人は綾香で、当時は自転車事故で入院していたのです

残りの2人は不破勇と大河原修作

この2人は不登校で、両親の意向で企画に参加していました

8人の中に今回の奇妙な手紙を届けた人物がいると考えた綾香は、当時のメンバーに順番に話を聴いてみることにしました

色んな人物に話を聴く中で、タイムカプセルに綾香が知らなかった事実が明らかになります

果たして、タイムカプセルを埋めるときに何があったのでしょうか

そして、誰が奇妙な手紙を送りつけてきたのでしょうか

ネタバレあり感想

ここからはネタバレありで感想を書いていきます

小説未読の方はご注意ください

意味深な演出

「タイムカプセル」には意味深な演出が多く存在します

例えば、物語の途中で登場人物が扉を開く描写があるのですが、本自体にも扉の挿絵が描かれています

読者も登場人物と一緒に扉を開けるイメージです

私はこの扉の絵に何か意味があるのではと思ったのですが、特に深い意味はありませんでした

ただ、登場人物が扉を開ける緊張感を読者も一緒に体験するための演出だったようです

また、物語のラストは袋綴じを開ける形式になっています

こちらも何か深い意味があるのかと思ったのですが、扉と同じような主旨の演出でした

登場人物がタイムカプセルを開けるタイミングで読者も袋綴じを開け、物語の真実を一緒に共有するための仕掛けだったようです

もう一つ細かいところですが、登場人物が階段を登るときに数を数える演出が入ります

そのときに

「一、二、三、四…」

と普通に数えるのではなく、

「一、二、惨、死…」

と不穏な漢字で表現されています

綾香たちがもらった手紙にも

「選ばれし君たちへ」

「選ばれ死君たちへ」

となっていて、不吉なイメージが浮かぶ演出になっています

これらの描写も、特に深い意味はありませんでした

このように、「タイムカプセル」には読者の感情を盛り上げるための演出が数多く存在します

冒頭の違和感

この物語の冒頭には、奇妙な描写があります

それは卒業式のシーンで、校長先生が

「不破勇(ふわいさむ)」

と名前を呼んだ直後に、壇上の人物が

「お前は誰なんだ!!」

と怒る描写です

これって会話として成り立っていないですよね?

名前を呼ぶのは校長先生だとわかり切っていますし、そもそも名乗らせるタイミングではありません

最初ここを呼んだときは

「少し精神的に不安定な人物なのかな?」

と考えて素通りしたのですが、この

「お前は誰なんだ!!」

と言った意味は最後のほうに明らかになります

実は不破勇の読み方は

「ふわいさむ」

ではなく、

「ふわゆう」

が正しい読み方です

つまり、壇上の人物は名前を間違えられたので、正しい読み方を叫んで怒っていたのです

「ふわゆう」が「Who are you」と似た響きなので、壇上のやり取りを見ていた人物は「お前は誰なんだ!!」と怒ったと勘違いした、というのが真相です

しかし、この勘違いは少し不自然だと私は感じました

「ふわゆう」と「Who are you」を勘違いするほど似たイントネーションで発音するとは思えないです

それに、仮に「Who are you」と言ったと思ったとしても、「お前は誰なんだ!!」と言ったと解釈するより前に

「なんで英語喋った?」

という疑問が最初に浮かぶような気がします

この勘違いした人物が誰かは明示されなかったと記憶していますが、割と特殊な思考回路を持つ人物だと思います

まとめ

今日は小説「タイムカプセル」を紹介しました

色々意味深な演出がありますが、その中には物語的に意味のあるものもあれば、読者を楽しませるためのその場限りの演出もあります

また、描写すべてに納得のいく説明が用意されているわけではないので、物語が終わって自分なりに想像を膨らませたい人に向いている作品だと思います

機会があれば読んでみてください

今日も最後まで読んでいただいて、ありがとうございました!

コメント

タイトルとURLをコピーしました