【紙の本でしか味わえない完璧な構成と伏線】小説「世界でいちばん透きとおった物語」紹介

小説

こんにちは! パドルです

今日は最近読んだ小説の「世界でいちばん透きとおった物語」を紹介します

杉井光による小説です

作者はライトノベルも執筆しており、その中の「神様のメモ帳」はアニメ化もされています

「世界でいちばん透きとおった物語」の一番の特徴は、

物語の仕掛けが紙の書籍でないと味わえないこと

にあります

電子書籍では絶対に味わえません(そもそも電子書籍版が出ることはないと思いますが)

実はその伏線は物語冒頭から仕掛けられているのですが、ほぼ間違いなく誰も気づきません

しかし、それが伏線だと明らかになる瞬間には全ての読者が必ず気づくように工夫されています

こんなに見事な伏線回収にはそうそう巡り会えません

こんな人におすすめ

「世界でいちばん透きとおった物語」はこんな人におすすめです

  • 紙の本が好き
  • 伏線回収ものが好き
  • やさしい物語が好き

あらすじ

簡単にあらすじを紹介します

主人公は書店でアルバイトしながら暮らしている藤阪燈真

彼は元々母子家庭でしたが、数年前に母を亡くしてからは一人暮らしです

母は小説の校正者で、燈真自身も母の仕事を手伝っていました

ある日、著名な推理小説作家である宮内彰吾が亡くなったとニュースが入りました

その宮内彰吾こそが、燈真の実父だったのです

燈真にとってみれば会ったことのない他人なのですが、遺品整理をしていた異母兄弟から連絡が入ります

話を聞いてみると、どうやら宮内彰吾の未発表原稿があるらしいのです

タイトルは

「世界でいちばん透きとおった物語」

原稿用紙600枚以上書かれていたことが宮内彰吾の手帳からわかり、異母兄弟としてはその小説を出版したいという意向があります

しかし、原稿は見つかっていません

異母兄弟は燈真の家にあるのではと考えましたが、燈真にも心当たりがありません

そこで、異母兄弟に依頼されて、半ば強制的に燈真が原稿探しをすることになりました

調査を進めていくうちに、宮内彰吾の色んな面が明らかになっていきます

かなりの好色家であったこと、人を殺しかけた経験があることなど…

父に対する理解を深めながら、燈真の原稿探しは続きます

果たして、父の書いていた「世界でいちばん透き通った物語」とはどんな小説で、原稿は見つかるのでしょうか…?

ネタバレあり感想

ここからはネタバレありで感想を書いていきます

「世界でいちばん透きとおった物語」未読の方はご注意ください

ちなみに、ネタバレされてもこの小説のすごさを感じることはできますが、やはり自分で気づいたときの驚きも味わっていただきたいので、先に読まれることをおすすめします

「透きとおる」の意味

小説のタイトルでもある「世界でいちばん透きとおった物語」

この「透きとおる」とはどんな意味なのでしょうか?

ほとんどの読者はそれを考えながら読み進めたと思います

私は、実は原稿は存在していなくて、形がないから「透きとおる」という意味なのではと考えていたのですが、全然違いました

その予想を遥かに上回る真実が隠されていました

「透きとおる」とは、

前のページや次のページの文字が透けて見えないこと

という意味です

紙の本を読んだことがある人であれば誰でも経験があると思いますが、読んでいるページの空白部分が、次のページに文字が印刷されている影響でうっすらと黒くなっていることがあります

普通の小説であれば、今読んでいるページと次のページはそれぞれの文章の文字数が異なりますのでこれは当たり前の現象です

しかし、この小説は「透きとおっています」

つまり、今のページの文字が存在する部分と、次のページの文字が存在する部分が、

完全に一致しています

この小説全編にわたって、見開きのページ構成は一文字たりともずれていません

すべて同じページ構成で物語を作り、しかもそれがちゃんと面白いのですから、驚嘆するほかありません

作者の努力は相当なものだったでしょう

「紙でしか味わえない仕掛け」というのはこれが理由です

伏線回収祭り

「世界でいちばん透きとおった物語」の一番大きな伏線回収は前のトピックで書いたとおりです

この真実を踏まえて小説の内容を振り返ってみると、全編にわたって伏線が散りばめられていたことがわかります

例えば、主人公の目の状態について

燈真は幼い頃目の手術を受けており、その後遺症で紙の本を読めなくなってしまいました

具体的な症状としては、今のページの空白部分に次のページで文字が書かれていると、その文字が透けて見えてしまう、というものです

これが原因で燈真は電子書籍しか読むことができません

また、この能力を活かして、たくさんの閉じてしまった封筒から中身が一つだけ違うものを当てる、という技術も披露します

私は最初この描写を読んだときに

「この能力には何の意味があるんだろう?」

とひっかかっていました

しかし、これも真実にたどり着くための伏線でした

つまり、燈真の父親である宮内彰吾はそんな症状を持つトウマが読める物語を作るために、「世界でいちばん透きとおった物語」を書いていたのです

宮内彰吾は妻子がありながら色んな女性に手を出す、世間的に見ればどうしようもない男ですが、自分の息子のためだけに一つの小説を完成させようとしていました

ベタな展開ですが、グッとくるものがあります

まとめ

今日は小説「世界でいちばん透きとおった物語」を紹介しました

紙でしか味わえない完璧な構成と伏線が楽しめる物語です

仕掛けも見事ですが、読み終わったあとはさわやかな気持ちになれるストーリーも備わっています

機会があれば読んでみてください

今日も最後まで読んでいただいて、ありがとうございました!

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