こんにちは! パドルです
今日は最近読んだ小説「52ヘルツのクジラたち」を紹介します
町田その子による作品で、2021年本屋大賞第1位を受賞しています
また、2024年には映画化も決定しています
私も少し前から気になっていたのですが、最近文庫版が発売されたこともあり、これを機会に読んでみることにしました
どういう話かを簡単に説明すると、
両親から虐待されていた主人公がとある事件をきっかけに祖母が昔住んでいた家に住み始め、そこで出会った自分と似た境遇の子供と心を通わせていく
という物語です
こんな人におすすめ
「52ヘルツのクジラたち」はこんな人におすすめです
- 心が揺さぶられる物語が好き
- 自分を理解してくれる人なんていないんじゃないかと不安でいる
- まっすぐな物語が好き
あらすじ
主人公は26歳で現在無職の三島貴瑚
彼女はとある事件をきっかけに祖母の実家に移り住むことにしました
貴瑚は当時に友人たちに何も告げず引っ越し、携帯電話も解約していました
誰ともかかわらず、ひっそりと暮らそうとしていたのです
貴瑚は元々四人家族でしたが、存命しているのは母親と弟のみで、父親はすでに他界しています
母親は貴瑚を虐待していたこともあって貴瑚のことを守る気はさらさらありませんし、弟は貴瑚に無関心です
そういう事情もあって家族に貴瑚を心配する存在はありませんでした
そんな中、貴瑚は移り住んだ町でとある少年に出会います
貴瑚が近所を歩いていたところ、急に雨が降ってきました
傘を持たずに出てきてしまったため途方にくれていると、傘を差し出してくれる人物が現れます
髪は長くボサボサで服もボロボロなその子供は、傘を差し出すとすぐ立ち去ってしまいました
後日その子供と会ったときに、貴瑚はアイスをご馳走します
そのときに判明するのですが、その子はうまく喋れないようでした
さらに、家族からは「ムシ」と呼ばれ、定期的に暴力を振るわれているようでした
誰ともかかわらず生きていこうとしていた貴瑚ですが、自分と境遇が似ているその子は救ってやらねばと思い立ちました
貴瑚がその少年を救うために奔走する過程で、徐々に貴瑚の過去も明らかになっていきます
その過去はかなり壮絶なものでした
はたして、この物語はどんな結末をむかえるのでしょうか?
ネタバレあり感想
ここからはネタバレありで感想を書いていきます
「52ヘルツのクジラたち」未読の方はご注意ください
貴瑚の周りの異常者たち
この物語には様々な人物が登場しますが、貴瑚と関わる人物の半分は異常者です
ここで言う「異常」とは、精神的に不安定で感情の起伏が激しく、自分のためなら人を傷つけることをなんとも思っていないという意味で使っています
物語の中で存在する分にはドラマ性が高まるのでよいのですが、現実にいたら絶対に関わりたくない人たちです
この登場人物たちの言動や行動が読者の心を揺さぶり、物語の印象をより強くしています
母
まずはすべての元凶ではないかと思えるこの人、
貴瑚の母です
彼女は貴瑚の実母ですが、貴瑚に対する愛情はかけらもなく、都合のよいときだけ貴瑚を利用します
そして、気に入らないことがあると貴瑚を殴ります
他の家族も貴瑚のことをなんとも思っておらず、母の虐待を容認しています
そんな環境で育った貴瑚ですが、それでも母のことが好きでした
母の役に立ちたくて、父に介護が必要な状態になったときも母に言われて介護をしました
そのとき貴瑚は就職が決まっていたのですが、介護のため内定を辞退しなければなりませんでした
ちなみに母は父の介護を一切しません
このような状況で貴瑚がまともな精神状態になるはずがありません
限界がきて死ぬことを考えて町中を歩いていたとき、偶然に同級生の美晴に見つけられなければおそらく貴瑚はそのまま死を選んでいたでしょう
貴瑚がひどい扱いを受けている描写を読むと心が痛みますが、逆に何不自由なく暮らせている自分は普段は気づかないけど幸せなんだなと思います
元彼
次は貴瑚の元彼です
貴瑚が田舎に引っ越す原因をつくった人物でもあります
彼は完全なサイコパスです
独占欲のかたまりで、浮気することをなんとも思っていません
貴瑚も彼にしてみれば浮気相手だったのですが、それが明らかになったにも関わらず、貴瑚を手放そうとしませんでした
逆に貴瑚に対して
「正規の交際相手と結婚するが、貴瑚のことも幸せにする」
と言ってしまう始末
個人的には異常としか思えませんでした
また、彼は気まぐれに貴瑚に会いに来るのですが、そのときに貴瑚がいないと怒り出します
しまいには彼女を殴り始めます
貴瑚が不憫でなりません
このように様々な登場人物が貴瑚を苦しめるのですが、それでも最終的には前を向く貴瑚の姿に心打たれます
物語の結末
辛い過去を経験してきた貴瑚ですが、少年と出会ったことで少しずつ前向きに変わっていきます
少年が安心して暮らせる場所を探そうと少年の親戚に話を聞きに行ったりもしました
引き取り手も見つかり明日にはお別れというタイミングで、考えが変わり貴瑚と少年はある決心をします
それは
「二人で暮らそう」
というものです
私はこの結論が出てきたときに
「まあ、そうなるか でも全然現実的じゃないよなー」
と思いました
貴瑚には元彼からもらった慰謝料がありますが、現在無職ですし、少年とは血縁関係が全くありません
小説に現実感を求めるのは間違っているかもしれませんが、あまりにも現実離れしていると冷めてしまいます
しかし、物語はその後現実的な方向に話がまとまります
貴瑚と少年は二年間は離れて暮らし、その間少年は親戚の家で育てられます
二年の間に貴瑚は定職に就き、少年が16歳になって後見人を指名できるようになったら、そのときに貴瑚を指名して二人で暮らす、というものです
こんなにも現実的で法律的にも隙がないように思える結末に至ったことに、私は感心しました
たしかにこのやり方なら無理がないですし、現実的で二人の未来に希望が持てる気がしたのです
現実的な幸せが想像できる解決策が用意されていて、ストレスなく結末を迎えることができました
まとめ
今回は小説「52ヘルツのクジラたち」を紹介しました
終盤まで心をえぐられるような描写が続きますが、幸せをつかもうとする貴瑚と少年の姿に心打たれます
機会があれば読んでみてください
今日も最後まで読んでいただいて、ありがとうございました!
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