こんにちは!
今日は最近読んだ小説「弁護側の証人」を紹介します
小泉喜美子による作品で、発売されたのは1963年です
60年前の小説なので、セリフ回しがまるでモノクロ映画を見ているようだったり、今の時代に合わない価値観が表現されていたりします
また、現代にはすでに存在しない尊属殺人という概念も登場します
尊属殺人とは、簡単に言うと親殺しです
当時は親を殺すと最低でも無期懲役となりました
この小説の中でも、犯人は死刑を宣告されています
このように現代とは様々な状況が異なりますが、ミステリーとしてのトリックは現代にも通ずるものがあり、私も読んでいて
「え、そっちだったの…!?」
となりました
主人公の漣子(なみこ)は自分の義理の父親が殺される事件に巻き込まれ、一審で下ってしまった死刑判決をひっくり返すために奔走します
ここで鍵となるのが「弁護側の証人」です
いったい誰が弁護側の証人として登場するのでしょうか?
こんな人におすすめ
「弁護側の証人」はこんな人におすすめです
- シンプルなトリックが好き
- 予想外の展開を期待している
- 気の強い主人公が好き
あらすじ
簡単にあらすじを紹介します
舞台は昭和三十X年の日本
K県F市の屋敷で事件が起こります
主人公の漣子は元ストリップダンサーで八島産業という大企業の御曹司である八島杉彦に見初められて結婚します
八島家の人々はその家柄の高さもあって、漣子のことを一家の一員として認めようとしません
嫁いだ当日に当主である龍之助がいる離れに挨拶しに行きましたが、それ以降漣子は一度も離れには近づいていません
離れに行くには扉の鍵を開けていく必要があるのですが、その鍵のありかを漣子は知らされていません
しかも、鍵のありかを知っている女中から皮肉を言われる始末…
そんな肩身狭く暮らしていた漣子ですが、あるとき杉彦の姉である洛子夫妻が屋敷を訪れます
彼女たちももちろん漣子のことを認めていません
食事中も周囲から嫌味を言われたのも影響したのか、漣子は気分が悪くなって倒れてしまいました
食事には八島家のかかりつけ医も招かれていたので、診察をしてもらうと、なんと漣子は妊娠していることがわかりました
実は杉彦は放蕩息子で、龍之助から愛想をつかされており、家を追い出されるかもしれない状況でしたが、ここにきて希望が見えます
杉彦は今後の八島家のことを父と話すため、姉、八島家の顧問弁護士とともに離れに向かいました
漣子は気分が悪くて寝ていたのですが、目を覚ますとそこに杉彦の姿がありました
杉彦から話を聞くと、どうやら父の説得は上手くいかなかったようです
漣子はもしかしたら洛子が漣子が杉彦とは別の男性の子供を妊娠したと龍之助に吹き込んだのではないかと考え、龍之助に説明しようと離れに向かいます
離れには鍵がかかっておらず、中に入って漣子が目にしたものは、龍之助の死体でした
果たして、いったい誰が龍之助を殺したのでしょうか?
ネタバレあり感想
ここからはネタバレありで感想を書いていきます
小説未読の方はご注意ください
まさかの容疑者
この小説の一番の魅力は
容疑者のミスリードだと思います
序盤、拘置所の面会室で漣子と杉彦が対面するシーンが描かれます
そのときはどちらが拘束されているかは明確に描かれていないのですが、私は読んでいてなんとなく杉彦が拘束されている側だと思っていました
また、物語は漣子の視点で描かれていて、漣子が夫の無実を証明しようと動いているように見えます
実際、漣子は龍之助を殺しておらず、読者としても漣子が逮捕されることはないだろうと思いながら読み進めます
警察が事件を捜査して犯人を逮捕する場面でも、漣子は犯人ではないという考えを疑う余地はありませんでした
しかし、控訴審の場面ではなぜか漣子が被告の立場になっています
そう、漣子が逮捕されて死刑宣告を受けていたのです
読者としては、
「なんで漣子が被告なの??」
と戸惑うばかりです
漣子は事件の関係者全員にはめられ、犯人に仕立て上げられてしまったのです
漣子は事件発生時、夫が不利にならないようにわざと情報を隠していたりしたのですが、逆に夫は漣子を犯人にするよう工作していたのでした
八島家の面々も同様です
漣子が夫を庇ったことが裏目に出て、漣子が逮捕されることになってしまいました
結局、杉彦が龍之助を殺害した決定的な物証が出てくることや、実は龍之助が漣子のことを買っていたことが明らかになり、漣子の無実は証明されます
周囲の人間すべてに裏切られても、自分の無実を証明することを諦めなかった漣子の姿勢は、見習うべきものがあります
また、漣子の無実を証明する際に重要な役割を果たしたのが、緒方警部補です
彼こそが「弁護側の証人」だったわけですが、そもそも漣子を逮捕したのが緒方警部補でした
しかし、漣子の訴えに真摯に耳を傾けて自分の間違いに気づくと、漣子の無実を証明する立場として証人となりました
これはなかなかできることはありません
人間というものは、自分の過ちをなかなか認められないものです
私も気を付けていますが、いざ間違いを犯したときにはどうやった自分の身を守れるかと考えてしまうときがあります
ましてや、緒方は警察の立場で、組織として一度した決定を曲げてまで漣子の味方になったのです
組織の一員である私も、彼のことを見習わないといけないと思いました
まとめ
今日は小説「弁護側の証人」を紹介しました
何も構えずに素直に読んでもらえれば、きっと驚きの展開が待ち受けています
50年以上前に書かれた小説ですが、展開の面白さは色褪せていません
当時の価値観も知ることができて、そういった面でも楽しめる小説です
機会があれば読んでみてください
今日も最後まで読んでいただいて、ありがとうございました!
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